ビストロバーガー登場 シェフ中
シェフ中は以前、阪急豊中駅前の路地にある昭和の長屋で営業していた。「業務用の冷蔵庫もオーブンも入らなかった。お客さんとの距離は、2つのコンロとカウンターを挟んで30センチほど。煙モウモウの小汚いビストロだった」と話すのはシェフの中脇弘一さん。2008年に現在の場所に移転した。「今のビルのオーナーが、小汚い店の料理を気に入って、誘ってくれた。これまで、人の縁に支えられてやってこれたことばかりだった」
18歳の時に家を飛び出し、友人を頼って新潟県へ行った。まかない付きという理由だけで洋食屋のアルバイトを始めた。「パートのおばちゃんに玉ネギのむき方を教えてもらったのが最初だった」と、料理人としての駆け出し時代を振り返る。
今では店の名物であり、中脇さんが愛してやまない料理「鴨(カモ)のコンフィ」に出合ったのもこのころだ。「フォークを入れた瞬間、固いイメージだった鴨肉がホロホロとほぐれたのが衝撃だった。自分でも作りたいと思った」。それが、フランス料理を勉強するきっかけになった。
鴨のコンフィは、鴨の肉を油で煮込み、そのまま油の中に漬け込んだ保存食。「コンフィはうなぎのタレに似ているところがあり、油の風味が増していくおいしさがある」と中脇さん。
鴨のコンフィ、和牛ホホ肉の赤ワイン煮込み、豚のリエット(豚のペースト)など素朴なフランス郷土料理を作る中脇さんが先日、新たに「豊中ビストロバーガー」をメニューに加えた。名前はお客さんがつけた。赤ワインで煮込んだホホ肉と、刻み野菜を混ぜたジャガイモのペースト、マスタードがサンドされている。じっくり8時間煮込んだホホ肉を250グラムも使ったというボリューム満点の一品だ。ワインとバターの風味が豊かなホホ肉は、柔らかくてトロトロとした食感。スープ、サラダ、飲み物が付いて1200円。
前菜、主菜を合わせて9種類がワンプレートに乗ったピンチョスランチ(1500円)も人気がある。
(進藤郁美)
=地域密着新マチゴト豊中・池田」第10号(2010年12月2日)
更新日時 2010/11/27