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編集長のズボラ料理(507) ネギの豚肉巻き

焼き色はほしいが、焦げないように注意

 困った時には、巻いてみる。巻いて大成功したものを、いくつも知っている。だからその発想を真似する。ズボラ料理の極意である。
 巻きといえば、巻きずしとなる。その中でも大成功したのが、節分の恵方巻きに違いない。大阪のノリ(海苔)屋さんが、ノリの販路拡大のために思いついてらしい。
 ゼロからの発想かといえば、そうではないようだ。大阪市・新町の花街で、お座敷遊びにあったという。それを全国に広げ、恵方巻きの売り上げは200億円とも言われる。食べる方より売る方にとって、縁起のいい巻き物となった。
 バレンタインデーにチョコレートを贈るのは、神戸市のメリーチョコレートの発想だと聞いたことがある。2月は2つの発想によって、食べるのが忙しい。
 兵庫県多可町、マイスター工房八千代の巻きずしも、大成功を収めた。町おこしを考えた地元のおばちゃんたちが行きついたのが、巻きずしだった。
 具は大きく、ご飯は少な目。そんな巻きずしだが、そのくらいなら、いたる所にある。
 具は何か。キュウリを立て半分に切り、それをカンピョウ、厚焼き卵、シイタケ、高野豆腐と一緒に巻く。これも、ありそうな気がする。
 何が違うか。キュウリが大きい。かぶりついて食べると、ガリガリする。ほかの具は甘い味付けだから、「キュウリでサッパリしてもらう」と言うが、どうも後付けの理由に思える。キュウリは周りでいくらでも取れるし、調理も簡単。これが最大の理由だと、勝手に推測している。
 キュウリが大きいだけで、売れる売れる。僕も友人の車に乗せてもらって買いに行った。販売開始時刻に行くと、整理券を渡され、110番だった。人間はキリギリスから進化したに違いない。
 近くのスーパーで時々、巻きずしのバイキング販売がある。2本、3本買うとお得になるから、つい買ってしまう。これも小さな成功例だろう。1度に食べきれなので、昼夜連続で食べることになるが、長い物には巻かれろ、の精神で食べる。
 今回はノリでなく、豚肉を使う。スーパーでよく、肉類を3つ選ぶ安売りをしている。豚肉の切り落としや3枚肉も、その中に入っている。買ってきて、その晩使わなかったものは冷凍する。また安売りがあると、また買ってしまう。そこで、前のものを使うことになる。どう料理するか。そんな困った時に巻く。
 ラップを広げ、その上に豚肉を少しずつ重ねながら並べる。その上にネギをたくさん乗せ、ラップを使って巻きずし状に巻く。砂糖、酒、しょうゆ、だしの素でたれを作る。フライパンに油をひき、豚巻きを転がしながら焼く。たれをかけて、さらに転がし、いったんふたをして火を通した後、最後にまた転がして焼く。
 発想が貧困なのでネギを使ったが、ニンジンやインゲンといった野菜でもいい。でも、工房のおばちゃんなら、舌を巻くような発想をするかもしれないなあ。(梶川伸)2021.05.24

更新日時 2021/05/24


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