編集長のズボラ料理(803) ハルサメのサケフレークポン酢
僕にとって、スーパー「ロピア」は、まことに都合のいい場所にある。
自宅の最寄り駅で近鉄電車に乗り、2つ目の駅、大和西大寺駅で降りる。急行なら1駅で、所要時間はわずか4分。
そこから歩いて平城宮跡を西から東に横断する。大極殿や朱雀門など一部の建物は復原されているが、全体として何もない野っぱらのような空き地。それがいい。何もないから、藤原不比等や光明子と、長屋王の争いなどを、勝手に想像できる。
春は桜やツクシを見て、その時期を過ぎると、スイカズラやらカタバミやらムラサキサゲゴケといった野の花が咲き誇る。花を見ながらダラダラと40分ほど歩くと、ロピアの入った商業ビル「ミ・ナーラ」に着く。かつて、藤原氏に敗れた長屋王の邸宅跡だから、終着点としては、うってつけなのだ。
帰りは無料のシャトルバスで近鉄の駅に向かう。大和西大寺駅より、1つ向こうの駅。自宅までは普通で3駅、急行で2駅。良いコースではないか。
大和西大寺駅には、近鉄百貨店奈良店がある。そこが目的なら、自宅から歩くことがある。所要1時間30分弱。そこからさらに、ロピアまで足を延ばしたことはない。その根性がない。
ロピアに行くと、必ず買うものがある。1つはイベリコ豚。安いからである。時々買うのはローストビーフ用の牛肉の塊。お客さんが来る予定があって平城宮にの花を見るのが重なった時に限る。
2分の1くらいの確率で買うのがハルサメのサラダ。ハム、タマゴ、キュウリが乗っていて、南蛮漬け風の味付がしてある。買う理由は量が多いからだ。
今回は和風のサラダにすlる。ハルサメはゆで、その際にだしの素を加えて味をつける。具としてワカメ、サケのフレーク、ミョウガ。コンブの粉とポン酢を加えてよく混ぜ、器に盛る。
平城宮跡は、何もないから想像の世界が広がる。僕が新聞社の奈良勤務だったころ、旧長屋王邸宅跡の発掘調査があり、木簡(木に書いた文字)が大量の見つかり、奈良時代の高級官僚の生活などを垣間見ることになった。
木簡の中に、氷室(氷の保管場所)から長屋王邸に送った氷の荷札があった。そこで、想像が膨らむ。長屋王はグルメで、オンザロックで日本酒を飲んでいた。想像だけならいいが、おもしろおかしく記事にもした。僕はロピアに行くたびに、そのことを思い出し、グルメを気取って、食べ物を買う。基準はお得なことだから、長屋王とはちょっと違う。(梶川伸)2025.05.28
更新日時 2025/05/28