このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(583) 半熟卵ポテサラ

半熟ゆで卵を乗せた段階

 おかずと料理の違いなんて、ちょっとした差だと思う。例えば名前。気の利いたネーミングをするだけで、おかずから料理になり、料理は名物料理にランクアップする。
 遍路仲間と時々、大阪市・梅田のビアホール「ニュートーキョー」に行く。行けば必ず、紙カツを注文する。豚肉をたたいて薄くしたイタリア風カツレツのようなものだ。豚肉が薄いので、「紙」というニックネームがつき、名物に浮上した。名前は強い。
 しかも、僕らにとってはありがたい。伸ばして薄くしているので、とてつもなく大きい。レギュラーメンバー6人で行ったとしても、少なくとも1人3切れはあたる。
 奈良市・富雄の「たこどうらく」は、品数の多いタコ焼き屋さんで、軽く1杯飲むにはいい。メニューの中に期間限定ではあったが、カレーギョウザたこ焼きを見つけ。目が釘付けになった。「何のこっちゃ」
 タコの入ったカレーのルーを、皮で包んでギョウザを作り、それを具としてタコ焼きにしている。味はともかく、注文させる力がある。名前のままといえばそうなのだが、そんなしょうもないことなど普通はしないと思うから、これもストレートにつけた名前の勝ち。
 神戸市・三宮の居酒屋さん「青森ねぶた小屋」に行った。酒のみは地方の地名に弱い。つい、入ってしまう。メニューの中の十和田バラ焼きが気になり、地名マジックにかかってしまった。聞けば、十和田地方の町おこしから生まれた名物だという。
 バラは?バラ肉を使っているのではないかと思いついたが、これでは50点らしい。町おこし隊が「ベルサイユのバラ」の衣装でPRしたから、というのが残り50点。そんなもん、分かるか。でも、バラだけで盛り上がったので、当然ながら注文した。やはり名前の勝ち。
 奈良市・近鉄奈良駅そばの「ヤマトクラフトビールテーブル」で、友人とビールを1杯だけ飲んだ。先を急いでいたからで、あても1つだけにした。選んだのはボルケーノ・ポテトサラダ。「何や、これは」と思ったが、何なのかを知るために注文した。
 ここからはズボラ料理。ジャガイモをゆでてつぶし、みじん切りのベーコン、粉パセリを混ぜ、マヨネーズでポテトサラダを作る。それを皿に山型に盛る。半熟のゆで卵をつくり、山の頂上に置く。食べる時は、卵に切れ目を入れる。黄身が流れ出す。
 ボルケーノ・ポテトサラダは黄身を溶岩に見立てていた。ズボラはそのパクリ。「何や」と思わせた時点でに名前の勝ち。名前から噴火を予知できるほど、科学は進歩していない。(梶川伸)2022.02.26

更新日時 2022/02/26


関連リンク