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心にしみる一言(376) 人間は優しいことを望む反面、厳しさを望む人も多い

近畿三十六不動の納経帳

◇一言◇
 人間は優しいことを望む反面、厳しさを望む人も多い

◇本文◇
 近畿三十六不動というお寺参りがある。近畿2府4県の36の不動明王に参拝する。私は25年ほど前に少しずつ不動の寺を訪ね、巡拝記を毎日新聞に書いたことがある。
 始める前に、近畿三十六不動尊霊場会の下休場由晴・事務局長に、基礎知識を教えてもらった。取材に出向き、会って驚いた。私は若いころ、記者として大阪府南河内地区を担当したことがある。下休場さんはそのころ、河内長野市の助役(現在の副市長)だったのだ。思いががけない転身だった。
 霊場会は1979年にできた。新しい霊場会をつくる時、どの寺を選ぶかなど、寺の利害がからむので、寺から離れたまとめ役が必要なようで、その役が下休場さんに回ってきたそうだ。話はおもしろかった。
 不動信仰は根強い。「1994年の平安建都1200年の時に、不動尊が出張する出開帳を京都の大覚寺で催すと、5日間で3万何千人も訪れた」と、例を挙げた。
 さらに「不動信仰が強いのは、その厳しさにも理由がある」と前置きをして、取り上げた言葉も含む解説が続いた。
「観音は優しく、困っている人を助けてくれる。地蔵もそうだし、薬師も病気を治してくれる。不動は大日如来の化身だが、厳しさがある。人間は優しいだけではダメ。優しいことを望む反面、厳しさを望む人も多い。護摩にしても滝に打たれる水行にしても、努力が感じられる。世の中、いたれりつくせりではダメ。自分に対して、『これだ』というものをつかみたいと思っている」(梶川伸)2022.05.20

更新日時 2022/05/20


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