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まちなみ探訪① 池田市綾羽の町家を歩く

2 階正面左端など3 つのうだつがある商家(池田市綾羽1)。うだつは隣家との境界に取り付けられた防火壁で、昔その高さを競ったところから、なかなか出世しないことを「うだつが上がらない」という

 阪急宝塚線池田駅下車、北に伸びる商店街を抜けると伊居太(いけだ)神社が五月山を背にして鎮座する。旧能勢街道を横切り急な階段を登りきると、大樹がうっそうと茂った薄暗い中に拝殿と本殿が南北に並び、回廊のように社殿や蔵が囲む。凛(りん)とした空気の中に神がかりなパワーを感じた。

 南に下ると昭和時代の家並みに明治の家が点在する。町屋の中2階、通りに面した部分に、格子の部分を漆喰(しっくい)で塗り込めた虫籠窓(むしこまど)が目にとまった。塗り壁の家の1階は雰囲気を残して上手にリフォームされていた。2種類のうだつが残る黒漆喰の商家は商人の心意気を残している。迷路のように小路が入り交じるのは城下町だった証拠であろうか。低い家並みが続く中、突然背の高い立派な蔵がそびえ立った。窓回りの鏝絵(こてえ=漆喰で作るレリーフ)が凝っている。

 雨が降り出したのでアーケードのある商店街に戻った。「ひばり」という看板のお好み焼き屋ののれんをくぐると、元気なおばさんの声が響いた。「いらっしゃい。クーラーの良く掛かる席にどうぞ」。お好み焼きのメニューの横にタコ焼きのメニューが並んでいる。チーズ入りやエビ入りなど、その数10個。珍しいなとテーブルを見るとお好み焼きの鉄板の横にたこ焼きの鉄板が並んでいた。お好み焼きを注文すると、「お兄ちゃん自分で焼ける?」と聞いてきたのでお願いした。

 意外と話好きな女将で、町の歴史を説明しだした。うなずいて聞いていると自慢話が始まる。「ここで56年やってきた。こんな店やけど有名やで。同業者が良く食べに来る」お好み焼きをいただいてびっくり。なるほど美味い。「冷めても美味いお好み焼きや」

 入店時は誰もいなかったのに、食べるころには満席になっていた。すっかり池田の町とお好み焼きのファンになって出てきた。商店街は先ほどよりもにぎわっていた。盆踊りの輪が広がり、地元の人が歌う池田音頭の歌詞に聞き入った。池田は祭りが似合う普段着の町である。

【水原哲二さん】豊中市でリフォーム会社を経営するかたわら、趣味で全国の古い街並みを散策している。「水原社長のまちなみ探訪」http://grandma-homes.com/town/

五月山 うだつ

更新日時 2011/10/06


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