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地域医療を聞く② 片桐修一・市立豊中病院院長

 2011年4月に市立豊中病院の院長に就任した片桐修一さんは高校生のころ、大学は医学部ではなく文学部国文学科か哲学科に進むつもりだった。本を読むのが好きで、文章を書くのも得意だった。「文系」と自任していた片桐さんの希望は、開業医だった父の反対によって変更され、大阪大学医学部へ進学することになった。しかし後になってこれが正しかったと思うようになる。

 「実際に医者になってから気づいた。僕は医者に向いていると思う」

 医者の資質において、専門知識や技術と同様に重要なのがコミュニケーション能力だと片桐さんは考えている。医者はただ治療をすればいいわけではない。患者やその家族と話しあって治療方針を決め、信頼関係を築く必要がある。看護師や医者仲間との連携も大切だ。特に今は病院長という立場から、医療スタッフが互いに気持よく働ける職場の雰囲気にも気をつけなければならない。「どんなに手術がうまく賢い医者でも、コミュニケーションが下手な人はうちでは働けない」と片桐さんは言い切る。「心温かな信頼される医療を提供する」ことが、片桐さんと市立豊中病院の理念だからだ。

 コミュニケーション能力を重要視するのは、市立豊中病院が従来から掲げている「チーム医療」のためでもある。地域の中小病院と連携し、専門家をそろえ「それぞれ得意なところを活かして互いに補おう」というものだ。片桐さんは、これからの高齢化社会では地域の連携なしではどうにもならないところに来ていると危惧している。

 「高齢化社会で病床数はますます足りなくなり、在宅療養が増えるだろう」

 在宅療法は地域の小さな病院や診療所のかかりつけ医なしではあり得ない。また、高齢者以外の世代のがん予防や検診も重要になってくる。全体の病人の数を減らし、病床数に余裕を持たせるためだ。市立豊中病院は、50年前に発足した豊中市病院連絡協議会を通じ、他の自治体に先駆けて、市内の中小病院と連携を取ってきた。片桐さんは「高齢化社会を迎える今こそ、この連携が重要になってくる」という。そして「充実した地域医療のためには病院同士の連携はもちろん大切だが、住民同士のつながりもまた必要なことではないか」と地域コミュニティーの重要性を訴えた。

 文学部への進学は断念したが、今でも文章を読んだり書いたりすることが好きだという。市立豊中病院公式ブログでは「病院長のつれづれ日記」を毎週更新。サプリメントの効果など身近な疑問から、がんに対する専門医療まで、わかりやすく解説している。 

(早川方子)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第46号(2012年12月13日)

更新日時 2012/12/18


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