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編集長のズボラ料理(114) 大根ジェノベーゼ

大根を麺に見立てる

 昔はスパゲッティーと言えば、ミートソースだった。ナポリタンなるものもあったが、僕はあまり食べなかった。たいてい、ピーマンが入っているのだが、子どものころはピーマンが嫌いだったからだ。
 家ではもちろん、店で食べても、ミートソースだった。スパゲッティーは茶色一色だった。
 その後、スパゲッティーは七変万化した。名前からしてそうだ。スパゲッティーはスパゲティーになり、さらにスパゲティに変化したが、それも今は古臭い。パスタである。100人のうち、99人まではそう言う。残り1人に入る僕などは時代に取り残されて、そんな名前は「パスだ」と、言ってみたくなる。
 ソースの色も白、赤、緑と増えて、目がくらむ。その呼び方には目が回る。ミートソースなら、わかりやすい。ミートを使っていると連想できるからだ。それが、ボロネーゼとなると、そんなの知らねーぜ。ボロの肉を使っているのではないか、と皮肉を口にしたくもなる。
 ぺペロンチーノ、アラビアータ、ボンゴレ、カルボナーラ。ジェノベーゼ。何のこっちゃ。
 だから、日本の名前のスパゲッティーをよく食べていた。「壁の穴」という店で、タラコ・スパゲティーを。ほかの店でも、イカスミ、キノコ。日本の名前はホッとする。
 そう思っているのに、弟の奥さんがイタリア系の食材を持って遊びに来る。ドライトマトのオリーブオイル漬け、アンチョビソース、バジルペースト。「この3つがあれば、何でもイタリアンになる」と。
 そこで、バジルペーストを使う。スパゲッティーならジェノベーゼだが、わかりやすい大根にした。大根を薄切りにする。僕はスライサーを使う。さらに包丁を入れて、きしめんくらいの太さの麺(めん)状にする。強めのだし、砂糖としょうゆ少々で軽くゆで、ざるにあげる。フライパンにオリーブオイルをひき、大根をバジルペーストとともに炒める。
 名づけて大根ジェノベーゼ。わかりにくいスパゲッティーへのお返し。ベーだ!(梶川伸)2015.01.12

ジェノベーゼ カルボナーラ ボロネーゼ

更新日時 2015/01/12


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