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編集長のズボラ料理(143) タコのメンタイコ・マヨネーズ炒め

僕はメンタイコを多めに入れる

 兵庫県明石市に、魚の棚という商店街がある。明石の人はこの商店街が大好きだ。僕も時々行ってみる。「うおのたな」に行ってきたと話すと、明石の友人は「うおんたな」とくぎを刺さす。それほど誇りを持っている。
 海に近いので、名前に入っているように、新鮮な魚が売り物になっている。春の風物詩になったイカナゴのくぎ煮を作る際も、獲れたてのイカナゴをここで買う。
 もちろん、タコも買う。名の通った明石ダコだから、タコの話は特にうるさい。僕も回転すし屋で1番好きなのは生ダコというくらいタコが好きだが、明石は尋常ではない。「うおんたなでは、道をタコが歩いとる」。そんなことを平気で言う。
 新鮮な生ダコを売ってはいるが、歩いている姿は見た事がない。岡山県・下津井のタコも有名だが、そこでも道を歩くタコなど、お目にかかったことはない。そう反論でもしようものなら、大変である。
 「家族連れで歩いてることもある」。夏休みだからといって、家族でどこへ行くねん。「歩くの、結構速い」。全タコ界陸上競技選手権大会でもあるのか、と言いたい。
 タコの本場だから、商店街は明石焼きの店が何軒かある。だしにつけて食べるタコ焼き風なもので、たいていはまな板のような板の上に10個前後並んでいる。そこで、「タコが明石焼きの店に自分で歩いて行くんかい」と茶々を入れる。これが火に油を注ぐことになる。
 明石の人は口が裂けても「明石焼き」とは言わない。じゃあ、タコ焼きかというと、それも違う。「卵焼き」と言う。「タコが主役だから、タコ焼きでええやん」と言っても、相手の口から出てくるのは変わらない。「卵焼き!」
 広島のお好み焼きを大阪では、「広島焼き」という。お好み焼き屋に行っても、「広島焼き」で通る。ところが、広島では「広島焼き」とは言わない。「お好み焼き」である。そして、「大阪とは違うけんのう」と、自己主張する。明石の人と同じである。
 確かテレビで見たタコ料理を、簡単そうだったので、ズボラに取り込んでみた。魚の棚まで行くのは面倒臭いから、スーパーでタコを買う。面倒臭いからゆでたものを買う。タコはぶつ切りにする。ほぐしたメンタイコ、マヨネーズ、タコをボールに入れ、よく混ぜる。油を使わずに熱したフライパンに移し、マヨネーズを油代わりにしてしばらく炒める。少し香ばしい香りがしてくればでき上がり。「ほんまに商店街をタコが闊歩(かっぽ)してるんやろか」と考えながら食べる。(梶川伸)

魚の棚

更新日時 2015/08/14


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