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編集長のズボラ料理(160) トロロイカ

大葉をはさんでもいい

 僕は遍路旅バスツアーのプランを作っている。だから参考のために、ほかのバスツアーにも時々、客として乗ってみる。
バスツアーにも流行がある。遍路もその流れの中にあり、2000年から2005年までが、大ブームだった。きっかけはある。時代の流れだとか、社会的状況だとか、精神的変化のような、何か深く考えさせるものなら面白いのだが、そうではない。
 1998年に明石海峡大橋ができた。関西から四国へ車で行きやすくなった。そこで、大阪の大手の旅行会社が、どっと遍路ツアーに参入した。あまりにも現実的で、実利的・功利的な理由であるが。
 ただ、バスツアーをめぐる社会的状況の変化がないわけではない。バブルの崩壊以降、経済が停滞したが、旅行だけはエネルギーが続いた。その中心が、バスツアーだった。
ところが、いろいろなバスに乗り、客の方に飽きが出てきた。何か変わったツアーがないか、探していた時期に、遍路ツアーが登場し、それに流れたのだろう。偉そうな分析をしているが、その狙いは次にある。どうしても、トロロコンブに持っていかないと、この文章が成立しないのだ。
 遍路ツアーの全盛期と同じころ、年末の買い物ツアーが人気を集めた。正月用のカニなど、日本海に魚介類を日帰りで買いに行く。ちょっと料金が高いツアーだと、昼食にはカニが出る。
 僕も福井県への買い物ツアーに2回参加した。福井県のツアーには付き物がある。それは敦賀市で、「小牧かまぼこ」。製造直売所と、昆布館に寄ることだ。2回は行き先が散ったが、付き物は一緒だった。1回目は興もの珍しいからウロウロして、試食をしてみる。
 2回目となると飽きるから、早めにバスに帰る。試食をすると、買う気が起きてしまう恐れがあるからだ。バスの中では、一歩も出ないで目をつぶって眠っている人がいる。この人は、小牧かまぼこと昆布館のベテランに違いない。
 昆布館では、トロロコンブを実演販売している。これには触手が動きそうになるが、ツアーのルーティンになっているのが受け入れられず、思いとどまる。それに、家にはいつもトロロコンブが置いてあるからだ。フジッコではあるが。実は好きなのである。冷凍うどんを温めて、その上に載せたり、ご飯に載せてしょうゆをたらして食べたり。
 開いて皮を取ってある刺し身用のイカを用意する。イカの上にトロロコンブを敷き、ロール状に丸めて、しばらくおく。長めにおけば、コンブじめの雰囲気が出る。食べやすい大きさに切って、小さなロール状態で皿に盛り、刺し身として食べる。それにしても、遍路ツアーからトロロコンブへ、何の転機も経ないこじつけになってしまった。(梶川伸)

四国遍路 買い物ツアー バブルの崩壊

更新日時 2016/01/28


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