このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(166) 豚とリンゴの辛みそ煮

豚とリンゴの辛みそ煮

 テレビのグルメ番組を見ても、驚くとはそうそうはない。とても豪華な料理や上品な料理が出てきたとしても、それは店で食べるものだと思うし、そんな高そうな店には行く機会などないというあきらめもある。
 僕の驚きの基準は、家で手軽に作れるかどうかにある。そのためには、材料が平凡であること、メモをしなくても覚えられるような簡単な調理法であること。
 先日見た「旅サラダ」という番組では、久し振りに驚いた。女優さんが青森を旅していた。青森と言えばリンゴ。リンゴを使った料理を食べることになるのだが、それは豚肉とリンゴの鍋だった。「へぇー」と思わず声をあげてしまった。
 食材の中心は豚肉とリンゴ。すぐ手に入る。ほかにも使っていたが、感動していたので覚えていない。調理法は鍋。簡単、簡単。味付けはみそと、何かの辛み。感動していたので、何の辛みだったかは覚えていない。
 ところが、番組が終わるころには感動も薄れてきた。よく考えてみれば、リンゴを豚肉で巻いて、ワインかカルバドスで煮るズボラ料理を紹介したこともある。おふくろは豚肉をゆで、ポン酢・大根おろし・リンゴのすりおろしの組み合わせで食べさせてくれた。豚肉とリンゴは合うのだ。
 では、感動の源は何だったのか。鍋の表面に、薄切りのリンゴが並べてあった。赤い皮つきだから美しく、それが目に焼きついたからだろう。
 もう1つ、個人的な理由が思いあたる。毎年秋に、友人が長野のリンゴを1箱送ってくれる。昨年は同時期に、青森出身のご近所さんに、実家から送ってきたというリンゴをたくさんもらった。リンゴは大好きだからうれしい限りだが、毎日かぶりついてもなくならず、何か良い料理法はないかと考えたことがあった。この鍋も利用法の1つだと考え、うれしくなった。今年の秋は大丈夫だ。
 卓上用の鍋を引っ張り出すのは面倒くさいので、普通の鍋で煮ることにした。食材は覚えていないので、勝手に豚肉、ハクサイ、マイタケ、リンゴの薄切りに決めた。だしを取り、みそを溶く。辛みは何にするかだが、たまたま冷蔵庫にあった練り七味を選んだ。ユズコショウ、豆板醤(とうばんじゃん)や韓国系の辛みでもいいかもしれない。食材を煮るが、リンゴは最後に入れて、シャキシャキ感が残るようにする。
 リンゴの酸っぱ甘さ、みそのこく、練り七味の辛み、豚肉の脂分。思ったより複雑な味で、少し感動が蘇った。(梶川伸)

更新日時 2016/02/12


関連地図情報

関連リンク