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編集長のズボラ料理(193) 冷凍トマトそうめん

トマトは冷たいので、ふきんで包むなどしてすりおろす

 冬はラーメン、夏はそうめん。僕にとって、この原則はゆるぎない。
 とは言っても、店で食べるわけではなく、家で食べる場合のことを言っている。だからラーメンは即席麺(めん)で、そうめんは乾麺ということになる。
 もちろん、外で食べることもある。そうめんの産地、香川県・小豆島ではそうめんの製造所で食べた。奈良県・山の辺の道を歩いた時に、三輪そうめんの地を通り、長岳寺の庫裏で食べた。そんな時に思う。家で食べても同じじゃないか、と。雰囲気も大事ではあると、分かってはいるが。
 ステーキもそうだ。外で食べると、高額な支払いが待っている。店の雰囲気がかなり料金が加味されているに違いない。雰囲気を外せば焼き肉屋さんでいい。これは、ワイワイ騒ぐという要素としめの冷麺(れいめん)があるからこそで、冷麺さえ外せば、自宅でいいじゃないか。肉は焼くだけなので、いい肉を買ってきて、自宅でバクバク食べた方が肩がこらないし、服を汚したり、においがついたりすることを心配する必要もない。ただ、これは高級ステーキ店に行けないひがみの要素が、90%を占める。
 和が家は、そうめんには絶好の位置にある。奈良と京都の府県境に住んでいるから、三輪そうめんの産地に近い。今は閉鎖になったが、三輪そうめんの研究所も近くにあった。どんな研究をしているか、聞いてみたことがある。そうめんを2年3年と寝かせると、なぜおいしくなるか、そんな基礎的でゆったりとした研究をしているのだった。
 わが家お隣さんは、小豆島出身だからうれしい。何がうれしいかというと、小豆島から時々、そうめんが届くようで、そのおすそ分けがある。お隣さんは1人暮らしなので、そうそう量を食べるわけでもない。だから、大量にそうめんが回ってくる。近くの100円ショップをのぞけば、長崎県の島原そうめんを売っている。
 小豆島のそうめんは、江戸時代の伊勢参りの途中に三輪で作り方を習い、それを持ち帰ったという説が有力らしい。島原そうめんは、小豆島から伝わったと、僕は推理している。小豆島は1度に1000もがキリスト教から改宗させられた隠れキリシタンの地。一方、島原はキリスト教徒にようる島原の乱が起こった地。キリスト教徒によって小豆島から島原にそうめんが伝わったと、僕は勝手に解釈している。つまり、三輪と小豆島、島原の接点が、家の周辺にあるのだ。
 だから、家でそうめんを食べる。そうめんが切れると、近くのスーパー「近商ストア」で、石丸製麺のものを買う。僕は以前、高松に住んでいて、讃岐うどんを連日のように食べた。石丸は土産物の讃岐うどんを作っていて、ついでにそうめんも作っている。遍路にも行っている縁もあって、石丸を買う。安いし。そうめんトライアングルはここに至って、讃岐うどんも巻き込んだ四角関係の様相を見せる。
 トマトを冷凍しておく。そうめんをゆでて冷やす。そうめんつゆも冷やしておく。つゆを器に入れ、冷凍トマトをおろし金ですりおろして加える。それにそうめんをつけて食べる。つゆやそうめんが冷えていれば、冷凍トマトのシャキシャキ感とさわやかさが加わり、一味違ったそうめんになる。
 夏がきた。また隣からそうめんが届くのを期待して、トマトを冷凍しておこう。(梶川伸)2016
.06.30

更新日時 2016/06/30


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