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心にしみる一言(121) 人間のスピードだと人間が見えてくる。人間社会が見えてくる

琵琶湖

◇一言◇
 人間のスピードだと人間が見えてくる。人間社会が見えてくる

◇本文◇
 滋賀県知事を務めていた国松善次さんに、自転車についてのインタビューをしたことがある。国松さんも私も自転車に乗っていたので、先輩記者が設定した変わった取材だった。
 1番聞いてみたかったのは、新人職員に自転車で琵琶湖を一周させる研修のことだった。グループを組んで、1泊2日で自由に企画する。その体験をメールで知事に送る。
「知事の趣味の押し付けだ」と組合から抗議があったそうだ。「滋賀県全体を考えるプロになったのだから、県全体を体感してほしい」という考えで実行した。
 自動車で回ることとの違いを聞いた時に、上の言葉が出た。「まずスピードが違う。人間のスピードと機械のスピードの違い。人間のスピードだと人間が見えてくる。人間社会が見えてくる。機械のスピードは、人間くさい部分がく省略されてしまう。自転車は街のにおいが感じられる。自動車だと窓を閉めて、自分の最もいい空間の温度を作る。風も当たらん。自転車だと、風はあたるし、温度はわかるし、雨もあたる。自然と人間が触れる、同時に歴史に触れる」
 これは同感だった。自転車で四国88カ所を回ったことがある。頭から転倒して脳しんとうを起こした危ない経験もある。パンク4回、地元の人のありがたみを感じたこと限りなし。人間は自然と。人の海に中で生きてきているのだから。(梶川伸)2018.08.26

更新日時 2017/08/26


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