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編集長のズボラ料理(433) コンニャクの甘辛炒め・天然だしまぶし

コンニャクは煎り付けようにした方がいい

 「味はどうだった」と聞かれれて困るものがある。その筆頭はコンニャクではないか。
 コンニャクには味がないと思うかからだ。コンニャクにつけてある味について聞かれれば、答えようがあるのに。
 コンニャクは味を運ぶ乗り物なのだ。人間が遺伝子のための乗り物であるという、わがまま遺伝子の理論は、コンニャクにも適用できるに違いない。
 兵庫県多可町の和紙の施設「杉原紙研究所」に、遊び仲間で行ったことがある。帰りに近くの物産館に寄った。名前がふざけてると思ったからだ。
 「かみ高地」。山間地なので、「高地」はいい。和紙の里なので、「紙」もいい。それを2つ合わせると、「かみこうち」となる。それもいいのだが、音から「上高地」を連想するので、笑わせる。
 土産に買ったのは、名物という「凍りコンニャク」だった。コンニャクの水分を抜いたせんべいのようなもの。店に人によると、凍てついた夜にコンニャクを干し、水分が凍ると、パンパンとはたいて氷をはらって作るそうだ。
 これはスポンジのようなものだから、煮込むと煮だしを十分に吸い込む。まさに味がつき放題の乗り物だった。それなら、煮だしだけを飲めばいいじゃないか、とも思うが、それでは飲み物で、食べ物であるには固体がいる。
 スポンジでなければ、よく煮込む以外にない。同じ遊び仲間で奈良県天川村に行ったことがある。途中の黒滝村の道の駅に寄り、敷地内にある黒滝こんにゃく・わらび餅の里という屋台で、串コンニャクを食べた。
 しょうゆ味で煮てある。味はよくしみていた。コンニャクの密度が薄いため、味がしみやすいのだろう。やっぱりコンニャクは、味の乗り物でなければならない。たまらず、2串も食べてしまった。
 板コンニャクを味の乗り物にするため、裏表の表面に包丁で十字に切れ目を入れ、味の座席を作る。食べやすい大きさに切り、白だしを入れた水でよく煮る。鍋からあげて水分を切る。フライパンに少量の油をひき、コンニャクを入れて炒める。味付けはみりんとしょうゆ。水分がなくなったら、最後にトップバリューの天然だしパックの袋を破いて、振りかけ、さらに煎り付けるようにする。
 茅乃舎(かやのや)のだしなら、袋を破ってそのままつかえるが、高いのでほとんど買うことはない。天然だしパックは安いが、魚の粉の荒い物が混じっているので、ふるいにかけて使う。客に出す時は、「茅乃舎はいいねえ」とさりげなく言う。それを使ってはいないが、商品についているレシピの冊子は参考にしているから、決してうそではない。(梶川伸)20.08.28

 

更新日時 2020/08/28


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