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心にしみる一言’280) 名前をつけたら植物園になる

実光院の不断桜

◇一言◇
 名前をつけたら植物園になる

◇本文◇
 京都市・大原の実光院に不断桜を見に行ったことがある。この桜は10月ごろから翌年の春まで花をつけるので、この名がある。
 訪ねたのは11月のこと。紅葉と桜が一緒に楽しめる寺だった。取材だったので、住職の母(先代住職の妻)に応接間で、話を聞かせてもらった。
 植物が多く、よく作り込まれた庭。話は先代住職の庭への思いに及んだ。
 「先代が茶室を造った。山の木を自分で磨いて」。そう言って、「応接間もいいが、茶の席も見てほしい」と案内された。
 茶室に合わせて、庭を整備した。「ボツボツと手作りで」。山で切ってきた木を植えた後、自分ではさみを入れた。「借景を生かすために、木は高くしなかった」そうだ。
 お金をかけない庭づくり。その分、「庭に1日いてもあきない人だった」と、夫を語る。
 砂を取ってコンクリートに混ぜた。砂を取った後に穴があいた。昭和11年の水害で穴ぼこが池になった。これもおもしろいエピソードだった。

 「野草、山野草をたくさん植えたが、名前をつけなかった」。その言葉に続いたのが、取り上げた「名前を書いたら植物園になる」だった。これも先代の庭づくりへの考え方を教えてくれる言葉だった。(梶川伸)2021.01.05


更新日時 2021/01/05


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