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心にしみる一言(283) 名物はツガニうどんだが、まだうどんの玉が届かない

奈半利の街並み

◇一言◇
 名物はツガニうどんだが、まだうどんの玉が届かない

◇本文◇
 四国遍路では、食べ物の思い出も多い。印象に残ったものの1つにに、ツガニうどんがある。
 8月の暑い日だった。歩き疲れて、高知県奈半利(なはり)町の土佐くろしお鉄道奈半利駅に併設された道の駅で一休みした。ちょうど昼ご飯時だった。
 道の駅の隣に、小さな海産物の店があった。店に入り昼食を物色しながら、主人にお薦め聞いた。ツガニうどんだと言う。それを頼むと、「うどんの玉がまだ届いていない」という。何ともノンビリした会話だった。
 仕方ないので、道の駅でタチウオなどのすしの盛合わせを買い、屋外のテーブルに座り、割りばしを割った。そこへ海産物屋主人がやってきて、「注文していたうどんの玉が届いた」と教えてくれた。このユッタリ感がおもしろい。すしは夕食に回して、うどんを食べることにした。
 ツガニはモクズガニのこと。それをつぶして、だしにする。運ばれてきたうどんは、発泡スチロールの丼に入っていた。うどんの上には小エビが3匹。スーパーかどこかのうどん玉、使い捨ての丼、ささやかな具。確か500円という安さ。都会とは全く違うのどかな昼食ではあったが、だしは実ににうまかった。
 遍路旅の先達(案内人)として、この店のツガニうどんを昼食に組み込もうと思って、連絡を取ったことがある。すると、「今は冷凍のツガニしかないので」と、あまり薦めなかった。正直な主人だと思った。(梶川伸)2021.01.20

更新日時 2021/01/20


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