寺の花ものがたり
寺は阪神大震災で大きな被害を受けた。本堂を改修し、庫裏を建て替えた。本堂の前に、新しくなった建物とは対照的な山桃(やまもも)の古木が、どっしりと根を張っている...
「寺の紋が桔梗(ききょう)なんです。理由は定かではないんですが」。住職の爾(その)英峰さんは言う。確かに、建物や屋根の瓦などに、桔梗の花があしらってある。 ...
質素で小さな山門だ。長さ50センチほどの黒塗りの板に、白地で山号が書いてあり、くぎで打ち付けてある。背の高い人は、少し腰を曲げてくぐらないと、頭をぶつけてしま...
松永雄重さんが住職になったのは、1958年だった。「お化け屋敷」と言うほどの荒れ寺だったらしい。檀家は11軒。他に職を持つことをせず、住職に専念し、檀家を増や...
志納所を過ぎて仁王門への参道は、かなりきつい坂を登る。瀬戸内海を見下ろし、道端に設けられたミニ西国三十三カ所に手を合わせながら行く。その二十三番勝尾寺の本尊、...
いずれが菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)。2つの花の見分けは難しい。それに花菖蒲(はなしょうぶ)でも混じろうものなら、ますますややこしい。 「杜若は葉っ...
日本石楠花(しゃくなげ)なので、花の色は淡い。境内の山肌に沿って枝を広げている。山肌を覆っている、と言ってもいい。花のシーズンには日記をつけるように写真を撮っ...
カヤぶき屋根の庫裏(くり)を囲んで、牡丹(ぼたん)が咲き誇る。先代住職の新見竜童さんが1963年から2000株を植えた。亡くなった後は、娘で現住職の新見智章さ...
中庭を開放していないので、低い垣根越しに1本の大山蓮華(おおやまれんげ)を見る。ただ、寺を始めた先々代住職の大石順教尼も、自室からこんな距離で眺めたはずだ。 ...
「願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」と詠んだ西行は、願いの通り、桜の咲き始めるころ、この寺で世を去った。西行を慕った江戸時代の似雲(じうん)...