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編集長のズボラ料理(570) キクイモのそばつゆ漬け

大根とナガイモとジャガイモを合わせたような食感がある

 四国のバス遍路旅の先達(案内人)を何度もさせてもらった。良い遍路道は少し歩くので、「ちょっと歩き」を旅の名前に被せていた。
 1泊2日が基本で、おおむね月に1回のペースで四国霊場を回り、1年ほどで結願する。参加者は女性が多い。そんなことが前提の遍路なので、心がけたことがいくつもある。
 例えば寺の参拝の時間など、ゆっくりめの行程表を作る。年配者が大いにので、せかされれるは嫌だからだ。ゆっくり行程なら、たとえ渋滞など予期せぬことがあっても、あわてる必要はない。
 もし、時間が余れば、寄り道をすればいい。だからといって、お金がかかる場所には行けない。すでに旅行会社は旅行代金をすでに受け取っていて、それ以上の個人負担をお願いするわけにはいかない。そこで、無料の観光名所を、隠し玉として持っておくこおとも心がけた。
 高知県・足摺岬方面に行った際、とっておきの隠し玉を使った。大月町・柏島の観音岩に案内した。海の中から突き出している岩が、観音さまの形をしているから、この名前がある。遍路には打ってつけの寄り道と自負した。もちろん、無料。
 この時は横道にそれること1時間あまり。それでも、参拝時間などを少しずつ切り詰めることで、行程に支障はなかった。それほどのユルユルプランである。
 では、参加者に喜んでもらえたか。バスを降りて、5分ほど海岸の岩場の道を歩いて行く。観音岩が見えた途端、「ワー」と声があがった。成功!成功!そう思ったのだが、5分も見ていないのに、みんなバスへ帰ると言う。
 実はとても寒い日だった。しかも海風が強かった。これは計算に入れてなかった。おかげで、寄り道だけは時間節約となった。何のこっちゃ。
 隠し玉てよく使うのは道の駅。女性が多いので、必ず喜ばれる。心がけたのは、そこの名物を知っておくこと。「土産に何がいい?」と聞かれるからだ。
 自演調査も兼ねて、徳島県の吉野川ハイウェイオアシスでは、キクイモ(菊芋)の酢漬けを買った。名産と書いてあったからだ。キクイモ自体があまり知られいないし、しかも瓶のラベルの製造者欄には、個人名が記してあった。これぞ隠し玉。
 ある時、そのオアシスで、お薦めを聞かれた。ホラ、来た、待ってました。ところが見当たらない。オアシスの人に聞いてみると、「おばあちゃんが体調を崩したので、もう入ってこない」という。何と、生産者はたった1人だったのだ。
 最近はキクイモもしばしば、売っているのを見るようになった。皮をむき、薄切りにする。それをソバつゆに1日漬けておくだけ。
 オアシスのものとは、酢とソつゆの違い。何だ、名産など簡単ではないか。僕の名前を記して、オアシスに置いてほしいくらだ。(梶川伸)2021.12.25

更新日時 2021/12/25


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