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編集長のズボラ料理(571) サツマイモの豚肉巻き

少しサツマイモが見えた方がおもしろいかも

 奈良勤務の時に知り合った仲間が、30年以上も交流を続けている。交流と言えば聞こえはいいが、要するに定期的に例会と称して一杯飲むのである。
 当初は安い居酒屋さんを探していろいろと店を替えた。やがて、店探しが面倒くさくなった。主目的は酒を飲むことなので、店はどこでいいと安易な道をたどり、例会の場所は固定するようになった。
 奈良市・西大寺の居酒屋さん「花の」が例会場になった時期があった。老夫婦がやている小さな店だった。なじみになったので、押し花を送ったことがある。
 僕の押し花は野の花を使う。野の花ならタダだから、いくらでも調達できる。それを押して紙にあしらい、100円ショップの額に入れる。非常に安上がりな楽しみといる。
 難点が1つある。野の花は色があせやすい。あせると赤も白も青も黄色も、花は黄土色になってしまう。それが野の花らしくくて、セピア色と思えばいいのだが、やはりきれいな色にはかなわない。
 次の例会の時、押し花は壁にかけてあった。その次の例会の時、100円の額は健在だったが、中身は押し花ではなく、店のメニューに変わっていた。
 年齢のこともあってか、花のは店じまいした。難民となった僕らは、奈良市・富雄の居酒屋さん「青の洞門」にたどり着いた。大分県出身の家族がやっていて、九州弁の話し方がおもしろかった。ここにも押し花を押し付けて、しばらく「青の時代」が続いた。
 やがてメンバーの1人が、奈良市・学園前の駅ビルにある居酒屋さん「味楽座」を見つけ、便利な場所での楽々例会が5年ほど続いた。ところが、新型コロナウイルスのせいで、店を閉じてしまった。
 再び難民となった僕らが行き着いたのが、青の洞門だった。先日の例会で久し振りに訪ねると、店の人は覚えていてくれた。壁を指さして、「この人たち、どうしているのかねえ」と離していたという。指の先に、見る影もない押し花の額があった。
 新しいメニューがいくつかあり、僕はその中から、サツマイモの肉巻きを選んだ。今回はそれをヒントにした。サツマイモをゆで、取り出して冷ましてから皮をむき、細めに拍子木切りにする。それを数本束ねて豚の三枚肉の薄切りで巻く。巻き終わりの部分に溶いた小麦粉をつけてとめ、肉がバラバラにならないようにする。しょうゆ、酒、みりん、砂糖をまぜてたれを作る。フライパンに軽く油をひき、豚肉の各面を焼き、最後にたれを注ぎ、炒め焼きにする。
 青の洞門の押し花は、メニュー表に変わらなかった。いい店やなあ。メニュー表に変わるまで、例会場はここだと思った。(梶川伸)2021.12.30

更新日時 2021/12/30


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