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編集長のズボラ料理(49)ナスと麩の豆乳煮

煮る時は弱火でゆっくりと

 体のためにと、何度か挑戦し、何度も挫折する食べ物がある。僕の場合、最たるものは玄米である。
 その果てしない挑戦の始まりは、共同購入を展開していた友人の勧めだった。「結構うまいじゃない」と、最初は思う。ところが、白米が恋しくなる。そこで、玄米の回数を減らし、それも5分づきの玄米に変え、やがて白米に少しだけ混ぜるように撤退準備を進め、時期を見て退場の運びとなった。
 その記憶が消えたころ、また果敢にチャレンジした。「やっぱり、玄米は味が濃いな」と、好調な出足である。ところが白米の誘惑は強く、「古くなったな」などと言いながら、残っていた玄米をお払い箱にした。
 3回目はスタートの時に、高らかに宣言した。「玄米は味ではない。玄米という思想を食べるのだ」。やがて、思想が3カ月ももたない軟弱なものだったことを思い知る。
 4回目はテクニックを使った。僕はすしが好きで、その事を作戦に組み込んだ。新大阪にマクロビオティックの玄米のすし屋があり、そこに通ってみた。最初はキチンとキトサンで育てたニンジンのジュースも飲みながら、「健康第一」と玄米ずしを口に運んだ。しかし、「たまには天神橋筋のすし屋激戦区に」と出かけると、もう新大阪に足が向かなくなった。
 豆乳は玄米とは反対の方向にある。同じように共同購入から入った。子どもが生まれるころだから、40年近く前である。やがて牛乳に先祖帰りし、定期購入をやめた。ただ、年をとってきて、次第に抵抗がなくなり、今はしばしば料理に使う。
 知り合いの弁護士がバブルのころ、岡山県・牛窓に別荘を買った。誘われて男4人で1泊したことがある。夕ご飯は分担して作った。僕は豆乳とタマネギで勝負に出た。タマネギは1人1個ずつで、皮をむき、丸まま豆乳と塩、少量のだしの素で煮た。自信満々でテーブルに乗せた。弁護士は言った。「初めての食べ物ですね」。さすが、冷静な大人である。「口に合わない」とは言わなかった。結局、みんなの料理より、日生(ひなせ)の漁協の店で買った刺し身と、ゆでただけのエビの方がおいしかった。
 ナスを大き目の短冊に切り、サッとゆでる。麩(ふ)を水で戻す。白しょうゆと少々の塩を入れた豆乳で、麩をゆっくり煮る。味がしみたころ、ナスも入れ、さらに煮る。豆乳タマネギを超えたと思うけどなあ。(梶川伸)

編集長のズボラ料理

更新日時 2013/08/11


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