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編集長のズボラ料理(98) 牛肉・セロリ炒め

牛肉とセロリ以外は好みで

 セロリはおいしいのかなあ? そんな疑問が時々、頭をかすめる。
 子どものころは、悩む必要はなかった。セロリなどという洋風の野菜を、おふくろが知るわけもないので、おかずにも出てきたことはない。外食の際に何かの間違いで食べたとしても、あんな変な食べ物を子どもが好きになるはずがない。
 友人の子どもが3歳を前にして、すでにヒジキの煮物が好きだ。これも意外に思うが、もし子どもがセロリを好きなら、意外性はヒジキの5倍にはなるだろう。つまり、セロリは少なくとも大人の食べ物といえる。
 では、大人はなぜ食べるのだろう。セロリの特徴は、はっか性の香りと味である。以前、奈良県天川村の友人に山菜採りの楽しさを教えてもらった、川の水で土を落とした山ウドを食べた。メンソレかタイガーバームのような強い香りで驚いたが、セロリはその香りを薄めたような感じがある。
 メンソレがおいいしか、というと、そんなことはない。タイガーバームをご飯につけて食べた話も聞いたことはない。もし、風邪をひいている時なら鼻が通っていいかもしれないが、目にでも飛んだら、えらいことになる。
 それでも、大人は食べる。ビールのあてに野菜スティックを頼む。だいたい、大根とニンジン、セロリが組み合わされている。たいていは1人ではなく、何人かで食べるのだが、その時にまずセロリをつまむと、「うむ、やるなあ」という印象を相手に与えることにある。味よりも、雰囲気である。
 スープを飲む。セロリの葉で香りづけをしていることがある。そんな時、「セロリを使っているね」と、さり気なく同席した人に言って、「味のわかる大人」を演出する。しかし、あの強い香りは、さり気なくではなく、はっきりとわかるではないか。
 これらの例は、「セロリは味よりも、食事の場の小道具」という理論に収れんする。僕の場合、大人になって半世紀近くもたっているので、セロリにも慣れて、よく使う。ただ、味が気に入っているのか、惰性なのか、と突き詰められると、また悩んでしまう。
 牛肉を細切りにする。セロリはピーラーで皮の部分を削り、長細く切る。フライパンに油をひき、牛肉とセロリを炒める。コンソメスープの素、砂糖、しょうゆ(あればニンニクしょうゆ)、酒で味付けをする。量を増やすために、シイタケやネギ、ミョウガ、ネギなどを加えても良い。ただし、セロリの香りと味がほかのものに負けない程度に。結局は、セロリを大事にしているとみたい。(梶川伸)2014.09.08

編集長のズボラ料理 セロリ

更新日時 2014/09/08


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