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編集長のズボラ料理(254) 春キャベツとアサリの炒め蒸し

キャベツはもっと多い方がよかった

 子どものころ、「あっさり~死んじまえ~」という、ひどいギャグを言っていた。はっきり覚えてはいないが、行商のおっちゃんが「アサリー、シジミー」と言いながら売っていたような記憶がある。それをもじったのだろう。おっちゃんの声が聞こえると、悪がき仲間で言い合っていた。
 ほれほどアサリは、日々の食事の中に入り込んでいたのだろう。ほとんどは、みそ汁にしていたと思う。シジミもそうだ。
 アサリは春の象徴でもあった。5月に入ると、潮干狩りに行くのが楽しみだった。そのせいか、家には熊手があった。それを持って、アサリを掘りに行った。獲り終わると、しょうゆの焼き焦げた香ばしいにおいに逆らえず、サザエのつぼ焼きを食べた。
 徳島市に住んでいたことがあり、親類や友人が遊びに来た時は、シジミがもてなしの大事な役割を担っていた。鮎喰川(あくいがわ)のすぐそばだったので、泊り客には川でシジミを取ってもらい、翌朝のみそ汁に入れる。喜ぶこと間違いなし。川の堤防の野の花をはし置きにして、花を添える。完璧。
 僕の人生において、アサリもみそ汁から始まった。つまり和食の食材だった。大人になって居酒屋へ行くと、必ずと言っていいほど、アサリの酒蒸しを注文した。何となく粋で、しかも安いからだった。ここまでは和食テイストを主流にしていた。
 それなのに、食べ方の主流が次第に洋風へと変わっていった。その原動力が、アサリのニンニク炒めとスパゲッティーのボンゴレだ。酒蒸しとミートスパゲッティに飽きてきたころ、アッサリと変節しのだ。
 今回もその延長線上にあるかもしれない。何かで見たものを、ズボラ風にアレンジした。春キャベツはざく切りにする。マシュルームを薄く切る。ニンニクを薄く切る。フライパンにオリーブオイルをひき、ニンニクを入れて弱火で熱する。香りが立ってきたら、春キャベツとマシュルームを入れてしばらく炒める。アサリを乗せ、白ワインをふりかけ、ふたをして蒸す。アサリが開いたらかき混ぜ、軽く塩、コショウをする。アサリもオリーブオイルもニンニクも強い味だが、春キャベツがアッサリ感を出す。(梶川伸)2017.04.09

更新日時 2017/04/09


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