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編集長のズボラ料理(372) オクラの生ハムチーズはさみ焼き

生ハムは薄いから使いやすいが、ベーコンでもハムでもいい

 子どものころ、オクラなど食べたことはなかった。野菜が嫌いだったこともあるだろうが、オクラが一般的ではなかったことの方が大きいような気がする。
 大人になって野菜を食べるようになっても、オクラは長いこと口にしなかった。産毛が生えた緑色の長細いものが、野菜とは信じられなかった。だから食べられるとは思えなかったし、食べたとしても、まずいだろうと確信していた。
 毎日新聞の記者として、南河内を担当した時期がある。富田林市の会社の住宅に住んで、仕事をした。そこは一軒家で、広い庭がついていた。
 親父は転勤族で、ずっとアパート暮らし。僕も同様だったので、庭付きがうれしくてたまらなかった。仕事もせずに、いや、仕事の合間に、いや、「仕事もせずに」と「仕事の合間に」の中間ぐらいで、いろいろなものを植えてみた。
 ミニトマトはたくさん収穫できるのを知った。スイカは小さいのが1つと、テニスボールくらいのしかできず、難しいと分かった。取材で知ったことよりも、庭で知ったことの方が多かったかもしれない。会社に内緒だが。
 庭の野菜にオクラがあった。おかしなことに、食べた思い出は残っていない。大人の目で間近に観察すると、オクラは空に向かってできる。「なぜ、下向きではないのか」と不思議で、そのうちロケットのように飛んでいきそうな不気味さがあった。
 オクラの花はよく覚えている。ムクゲやフヨウのような形で、優しい黄色をしている。中心部はこげ茶色だが、これもシックで、花の方は好きになった。
 おかげて、似た花も知ることになった。遍路の途中の海岸沿いで、ハナボウを見る。散歩道では、綿の花も見かける。もちろん、オクラも。
 ネバネバものが体にいい、と言われるようになって、遅ればせながら、僕もオクラを食べるようになった。オクラは塩ですって、産毛を除く。へたを切って、少し塩を入れた湯で軽くゆでる。取り出して、縦に切れ目を入れる。大葉を半分に切り、とろけるチーズと細長く切った生ハムを包み、粉しょうゆをふって(なければ、しょうゆをほんの少したらして)、それをオクラの切れ目挟み込むみ、オーブンで焼く。
 それにしても、オクラのような大人っぽい野菜に、何で産毛が生えているのだろう。(梶川伸)2019.09.16

更新日時 2019/09/16


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