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編集長のズボラ料理(376) 貝柱のソテー・コーンとヨーグルトソース

冷凍していた貝柱を使ったが、できれば大きいものがいい

 以前、家族が「テレビで見た」と言ったら、「作れ」と同義語だと書いた。今回は「テレビで見た」は僕だった。だから、自主的に作るはめになった。
 貝柱を使った料理だった。東京から移り住んだシェフが、高松市・屋島の海が見える場所に店を開いた。シェフは「料理は余韻」と言い、「立ち去りがたい」と思ってもらうためには場所が大事だ、と語った。その余韻が、滅多にない自主的な行動に結びついた。
 20年あまり前、高松市に1年5カ月だけ住んだ。海のそばで暮らしたことはあまり無かったので、仕事をサボって、いや仕事の合間に海の見える場所をウロウロした。
 好きな場所ができた。身近なところでは、高松港を見下ろす香川県民ホールのレストランが気に入った。本州や瀬戸内の島々とを結ぶ船が、5分に1度くらいの間隔で出入しする。これを眺めていると、飽きなかった。店の人は「お茶1杯で長いこと居て」と、あきれていたことだろう。
 瀬戸内海のビューポイントも仕事をサボって、いや仕事のついでに探し回った。1番気に入ったのは三豊市の紫雲出山の岬。ここは300度を超す角度で海が見える。2番目はさぬき市の大串半島の先端。3番目が屋島の突端だった。
 仕事をサボって、いや仕事にかこつけて、島々も巡った。高見島の民宿に泊ると、30畳もある広い部屋に泊り、貝柱の刺し身を食べた。瀬戸内海では貝柱はホタテ貝ではなく、タイラギ貝を使う。民宿の主人がタイラギの漁師でたくさん用意してくれ、バクバクとそれをタイラギた。
 夏はサボって、いや仕事のふりをして、海水浴場も順番に行った。1番良かったのは粟島だった。結構長い白砂の海を、1人占め状態だった。
 ここは島だからいいのだが、普通を海水浴場は、ええ年をした男が1人で行く所ではない。泳ぎがあまり得意ではないので、浜で過ごす時間が長くなる。きっと変質者と思われたに違いない。
 さて、「テレビで見た」から作ろうとしたら、使っている食材の一部しか思い出せない。第一調理法を話していなかったことに気づくいた。しかし、もう遅い。料理はスタートしているから、ズボラ流で適当に作った。
 ホタテの貝柱に塩、コショウをふり、バターとオリーブオイルでソテーする。フライパンを傾けてバターなどのない方に貝柱を移し、両面に少し焦げ目をつける。焼けたら皿に乗せて、さます。
 冷凍のトウモロコシ、ヨーグルト、少し牛乳とバターも加え、ミキサーで混ぜる。味付けは少々の塩。うちの小さな庭にレモンバームがあったので、これもみじん切りにして、加えた。そのソースを皿の縁から流し入れ、冷蔵庫で冷やす。
 できたのは多分、「テレビで見た」ものとは違うだろうし、海も見えないので、余韻には欠けるし。(梶川伸)2019.09.29


更新日時 2019/09/29


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