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編集長のズボラ料理(441) ハクサイのクリームシチュー

小麦粉がダマにならないように注意

 「漬け物さえあれば、なんもいらん」。それがおふくろの口癖だった。
 大正生まれで、貧しい時代を生きてきたから、人生の前半はグルメとは縁遠い食生活を送った。その時代の女性の多くが、同じ言葉を口にしていたのではないだろうか。
 ぬか床を持っていて、何でもかんでも漬けていた。しかし、1番好きだったのは、ハクサイだった。僕も影響を受けて、「漬け物はハクサイにつきる」と信じて疑わない。
 親父は漬け物は好きではなかった。弟もそれほど食べない。だからハクサイの漬け物を食べるのは、おふくろと僕の担当だった。
 「おいしいのは茎」。これもおふくろの口癖だった。僕は葉の部分。ハクサイの漬け物における「すみわけ理論」だった。
 では、世の中全体はうまくすみわけているだろうか。どうも、そうではない。鍋料理をすれば、はっきりする。
 豚や鶏の水だきでも、寄せ鍋でも、ハクサイは主役ではないが、重要な役割を担っている。とりわけ、店で食べる時には。
 鍋に入れる食材は大皿に盛られて出てくるが、その半分はハクサイで占められている。主役は値段が高いから、豪勢に盛ることはできない。そこでハクサイが量を稼ぐ。ざく切りすれば、ホワホワの山になる。これが店側の狙いに違いない。
 山盛りのハクサイも、鍋で煮ればわずかになり、その時に一杯食わされたとなる。でも、もう遅い。茎と葉の争奪戦が始まり、それどころではないからだ。
 友人と食べに行った時や、自宅での経験則からいうと、茎よりも葉の人気が高い。よく観察すると、次のような経過をたどり、葉の優位性を証明される。
 茎は火が通って柔らくなるまでに時間がかかるから、先に入れておく。でき上がるタイミングは、主役もできあがるころでもあるので、箸(はし)は当然、主役に向かう。茎は不運にも、食べ残される。
 今度は葉を入れる。できあがるのは早く、そのタイミングでは箸が主役からハクサイへのと変わる。そんな幸運もあり、上に浮いている葉はドンドン食べられる。そして、鍋の終盤になっても、茎が残るのである。
 ハクサイは下半分の茎の部分を使う。20分ゆでてスープを取り、ハクサイの茎はいったん取り出す。鍋にバターを入れ、弱火で温め、小麦粉を入れて吸い込ませた団子を作り、牛乳とハクサイスープを加えて団子を溶かし、ゆるいホワイトソースを作る。ハクサイの茎を戻し、白だしを少し加えて煮る。
 葉はどうなるか。それはズボラ料理の389回を見てほしい。以前テレビで見たものを参考にし、2回に分けて書いただけの話である。(梶川伸)2020.09.29

更新日時 2020/09/29


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