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寺の花ものがたり(284) 元慶寺(京都市山科区)桜=3月下旬~4月上旬

1998年4月5日撮影

 花の寺はいくつも行ったが、その中でも元慶寺の桜は特に印象に残っている。それはひとえに、寺の人が口にした言葉のおかげで、そのことは「心にしみる一言」225回でも書いた。
 西国33所観音霊場を順番に参拝している時だった。大津市の三井寺に参り、次に元慶寺へと回った。着いたのは午後4時を過ぎ、閉門の時刻5時が近づいていた。
 小さな寺。10本余りの桜の木があって、満開だった。境内が狭いので、その本数でも桜に包まれた感があった。
 納経所に行くと、住職らしい人が「1番いい日に来なはった。桜は朝と晩でも咲き方が違う。きょうは朝から満開」と話した。ラジオでセンバツ高校野球を聞きながら、朱印を押してくれる。
 ノンビリとしたひと時。沖縄尚学が勝ち、PL学園が負けたことに触れ、「どちらが負けても、選手は可愛そうやなあ」と、またポツリ。
 三重県から来ていた夫婦と言葉を交わした。桜のほかにも、木瓜(ぼけ)、山茱萸(さんしゅゆ)、椿が花盛り。花と一緒の写真を撮ったあげたり、撮ってもらったり。のどかな時間に身を置いた。
 すると、住職らしい人の声。「門を閉めるよ」。気づくと午後5時になっていた。続く言葉は忘れられない。「見てごらん、桜が今散り始めた」。最初の花びらの数枚がハラハラと落ちていく。その瞬間に出遭った幸せ。
 「せわしゅうて、すまんの」「牡丹(ぼたん)もきれいやさかい、また寄ってや」。私たちが出るのを待って、山門が閉まった。

◇元慶テ寺(がんけいじ)◇
 京都市山科区北花山河原町13。京都市営地下鉄御陵前駅から徒歩20分。075-581-0183。貞観10(868)年に貞明親王(陽成天皇)を産んだ藤原高子の発願により、定額寺として建立されたのが始まりとされる。西国33所観音霊場番外札所。花山法王が出家した寺。本尊は薬師瑠璃光如来。境内自由。
(梶川伸)=状況が変わっていることもありますので、ご了承ください。2022.03.15

更新日時 2022/03/16


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