編集長のズボラ料理(900) ゴーヤの梅味天ぷら
「来た!」。これは、季節の味が届い時に、思わず口から出る言葉である。それほどうれしいものだ。買ったものではなく、自分で育てたものであれば、なおさらのこと。原則的には……。
9月になった。そろそろだ、と待ちわびる。半世紀近く続く友人が徳島に住んでいて、毎年スダチを送ってくれる。
玄関のピンポーンが鳴った。前日、クロネコヤマトから、配達の連絡があったから、間違いない。「来た!」である。ドアを開けると、まさにピンポーンだった。
手紙が同封されていた。庭のスダチの木は40年あまりの老木だったが、ついに枯死したそうだ。収穫した実を毎年送ってくれていた。出荷するものではないので、不揃いではあったが、そのことが彼の誠意を示しているようだった。
樹勢が衰えていき、数年前から実が取れなくなった。しかし、スダチは届いた。彼の友人の家のものを分けてもらい、それを送ってくれた。今回もそうだった。だから、大小があり、やや黄色くなったものもあったが、誠意は変わっていない。
次の味に移る。9月になったから、もう大丈夫だろうと、気をゆるめていた。ピンポーンが鳴った。玄関を開けると、定年後ファーマーを楽しんでいる元同僚からの段ボール箱だった。中は収穫した野菜が詰まっている。年数回届く。僕の口から出たのは、「来たか?」だった。
箱を開けると、巨大なカボチャ、大きな柑橘類4つ、ピーマン大量、そして問題のゴーヤ20本弱。「来たか?」の不安は、的中のピンポーンだった。
手作り野菜はありがいたい。もちろんゴーヤも。ただ、量が多すぎるではないか。毎夏のイベントは、食べても食べてもなくならないゴーヤとの格闘なのだ。今年は8月には届かなかったので、安心していたのに、「やっぱり来たか」だった。まんまとフェイントにひっかかってしまった。
ただラッキーなことがあった。その1は、今年はみな小振りだったこと。その2は、ちょうど娘が遊びに来て、柑橘とピーマンと一緒に5本持って帰ったこと。その3は、友人と会う機会があったので、お土産代わりに5本押しつけたこと。さあ、残りは10本弱。毎年の格闘で、食べ方はかなり学んだ。天ぷらも▽そのまま▽粉チーズまぶし▽クリーム入り▽アンチョビソース漬け、とやってきた。
今回は梅味にした。ゴーヤは縦半分に切り、種の部分を取り除く。内側に梅肉を塗ってから、半月形にカットする。ゴーヤに小麦粉をまぶす。ボウルに小麦粉、コーンスターチ少々を入れ、水を加えて混ぜ、天ぷらの固めの衣を作る。ゴーヤに衣をつけ、油であげる。
元同僚には、毎回お礼のはがきを送る。「ゴーヤだけは数を制限して」とは書きにくいので、毎年の格闘の自分への決意表明でもある。(梶川伸)2026.09.10
更新日時 2026/09/10