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編集長のズボラ料理(33) 煮豆サラダ

色が美しいのが、和風とは違うとこかもしれない

 病院と食べ物の関係は興味深い。おふくろが晩年、入院した時もそうだった。
 食べ物を飲み込む力がなくなっていると言われて、点滴の生活になった。それではおふくろが可愛そうではないか。そう思って、作戦を考えた。
 おふくろはスイカが好きだった。昔の人間だから、白いところも無駄にしない。ぬか漬けにしていたが、結構うまかった。そうだ、スイカを食べさせよう。12月だったが、スーパーで見つけて買い、小さく切って病院に持ち込んだ。
 ちょっと冒険だったが、食べさせてみた。食べられるやん。それも、「おいしいねえ」と言いながら。これに、僕もおふくろも味をしめたし、自信も持った。何度も持ち込んだ。それがきっかけで、病院食も少しずつ、食べるようになった。
 やがて、正月がやってきた。3日ほど、おふくろは家に帰ってきた。そこで、僕は第2作戦を敢行した。正月といえば餅だ。おふくろは餅が好きだった。餅を食べさせよう。さすがに、家族でも反対の声が上がった。餅をのどに詰まらせて、おおごとになるケースがあるからだ。
 餅を小さく切って、食べさせた。食べられるやん。それも「おいしいねえ」と言って。そのことが本人にとっても、うれしかったのだろう。それからは何でも食べた。もちろん、病院食も。
 僕は3日ほど、検査入院をしたことがある。検査のためだから、痛くもないし、安静にしておく必要もない。暇だから家に帰ったり、病院の付近を歩きまわったり、実に不真面目な患者だった。
 暇にまかせて、テレビもよく見た。その中に、在日大使館員の奥さんが、お国の料理を披露する番組があった。僕がたまたま見たのは、確か、中近東か北部アフリカの朝ご飯だった。それをズボラにしたのが、今回の料理である。
 豆の水煮を買ってくる。いろいろな種類の豆が入っている方がきれいで良い。豆を平たい皿に敷き詰める。ニンニクとパセリのみじん切りも加える。オリーブオイルをたらし、少し塩とコショウ、レモン汁をふりかけ、全体をよくかき混ぜ冷蔵庫でしばらくおいてから、トマトの小口切りを乗せて食べる。
 病院食も健康のために参考になる。入院は料理講習の場だったかも。病院と食べ物の関係は実に深いのである。(梶川伸)

煮豆サラダ

更新日時 2012/09/12


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