このエントリーをはてなブックマークに追加

寺の花ものがたり(3)高照寺(兵庫県養父市)木蓮=4月上旬~5月初め

2004年4月4日撮影

 木蓮(もくれん)に迎えられて参道の坂を登り、寺に着く。住職の密(みつ)祐快さんにあいさつをし、名刺を見て驚いた。住職のほかに、もう1つ肩書きがついていた。「染織造形作家」
 シュロの繊維を使う前衛の芸術家で、富山県立近代美術館にも作品があるという。「前衛をやっていると、やたらでかいか、やたら数が多いものを目指したくなる」
 木蓮を植え始めたのは1992年。関西花の寺二十五霊場づくりに、企画段階からかかわり、第5番に仲間入りするのが目的だった。それまでも木蓮はあったが、数本だった。「新興の花の寺」なのだと言う。
 植える段になって、「前衛の心」がムクムクとわき上がったのだろう。「やたらと植えた」。その数は300。「数は人を感動させ、立ち止まらせる可能性がある」と。
 なぜ木蓮か? 「仏教に蓮(はす)はつきもの。しかし、山には水がない。だから木蓮。昨年亡くなった父は、そう説明していた。でも、できすぎでしょ。本当は、ある朝、ふっと思いついた」。軽妙な語りである。
 木は高さ10㍍にまで成長した。「あまり手間をかけていないのだが、日当たりのいい場所だと、すぐに大きくなる。いいチョイス(選択)をした」
 多さは本数だけではない。6色8種類が境内を彩る。4月に入ると白から咲き始め、桃色、赤、錦(白と紫の混じった花を密さんはこう呼ぶ)、紫と続き、最後は黄色が開く。黄色は黄緑に近く、派手さはない。しかし、木蓮をよく知っている人でも、「へぇ~」と珍しがる。前衛の手法は成功している。(梶川伸)

◇高照寺◇
兵庫県養父市八鹿町高柳1156。0796-62-2865。JR山陰線八鹿駅から、村岡、湯村温泉、鉢伏行きバスで15分、高柳下車。入山料必要。養老4(720)年、行基の開山と伝えられる。秋は白萩(はぎ)が咲き誇る。

=2004年4月20日の毎日新聞に掲載したものを再掲載。状況が変わっているかもしれませんが、ご了承ください。201401.24

高照寺 密祐快

更新日時 2015/01/24


関連地図情報

関連リンク