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寺の花ものがたり(9) 極楽寺(兵庫県洲本市)花菖蒲=5月下旬~6月中旬

2004年5月29日撮影

◎所狭し境内埋める鉢植え
 赤い布をかぶせた机が、狭い境内に据えられ、日差しを遮るために、よしずが屋根のようにしつらえてある。風鈴が下がり、風に鳴る。その周りを、所狭しと鉢植えの花菖蒲(はなしょうぶ)が並ぶ。
 300種3000株を数えるという。ただし、本堂の前の境内や、中の地蔵のふすま絵の前に置かれているのは3分の1。残りは本堂の裏にあり、つぼみがつくと、一輪車で表舞台に運び出す。
 「私が企画担当。力仕事は主人」。住職、三木眞全さんの妻啓子さんが笑う。力仕事は鉢運びのことを言っている。
 そもそも14年前、啓子さんの友人から10鉢の花菖蒲をもらったのがきっかけだった。その年をはっきり覚えているのは、「長男の年と重なるから」とか。
 その鉢は見事な花を咲かせた。「見たことのないような紫。感激した」。近所の人と品種を交換し、新品種を取り寄せて、数が増えた。「花があふれる寺にしたい」という啓子さんも思いも強かった。
 眞全さんのお気に入りは、「貴公子」という品種。「黄色の発色がいい」と言うと、啓子さんが「3年目でやっと咲いたからですよ」と茶々を入れた。突然変異で、青紫に白の星が入った花ができた時には、「極楽寺」と名付けた。
 啓子さんが好きなのは「水の光」だという。「薄い水色で、すっきりとして爽やか」と表現する。夫婦で花菖蒲を楽しんでいる。
 見てもらうのは、6月20日までと決めている。それ以降も花は咲いているが、翌年用の株分け作業が大変で、鑑賞してもらうような状態ではないらしい。(梶川伸)

◇極楽寺◇
 兵庫県洲本市鳥飼中41(淡路島)。0799-34-0417。神戸市・三宮から五色線のバスに乗り、五色バスセンター下車。さらにタクシーで2000円程度。洲本市からはバス鳥飼線の鳥飼中で下車(便は少ない)。拝観自由。花菖蒲の株を販売。
=2004年6月9日の毎日新聞に掲載したものを再掲載。状況が変わっているかもしれませんが、ご了承ください。2015.04.04

水の光

更新日時 2015/04/04


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