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寺の花ものがたり(82)観心寺(大阪府河内長野市)の梅=2月中旬~3月下旬

2005年2月23日撮影

 和歌山県・高野山の僧侶がこの寺を訪ねた時に、「よく鳥が鳴くね」と言ったそうだ。「私のように毎日ここで生活していると、気づかないんですが」とは、住職の永島龍弘さんの感想である。
 実際に境内を歩いてみる。冬の寺は寒く、永島さんが「寒身寺」と冗談を飛ばすような時期だったが、確かにあちこちから鳥のさえずりが聞こえてくる。
 「ここは里山地域。町もあるが、山をひかえていて、緑もある」。金堂や三重塔を建立した楠木正成(くすのきまさしげ)を目当てに訪れる年配者がいる。観音参りの女性もいる。文化財を見に来る若い人がいる。そんな中で、「家族連れは、ここの環境に触れにくる。緑は人間をほっとさせる」と言う。
 梅は300本近くある。寺の境内にある梅としては多い方だろう。白梅がほとんどで、少し枝垂(しだ)れも交じる。先代住職が植えた木もあるが、樹齢250~300年のものも多い。ただし、庭師もはっきりとした樹齢は分からないらしい。
 幹や枝に白いかさふたのようなものがこびりついていて、痛々しく見えるものもある。しかし、それは古木の風格でもあるのだろう。「季節が来ると、頑張って花をつける。一生懸命に毎年、命をめぐらせる。その姿を見ると、古いものを大事にしなければいけないと思う」
 梅の古木のそばでは、石垣が目につく。その昔は、54もの塔頭(たっちゅう)があったという。石垣は塔頭の跡らしい。石垣と古木が一緒になって、時の流れを感じさせる。塔頭はいまでは2つしかない。
 境内は6万平方メートルと広い。自然と歴史の中に身を置いて、梅の花を見る。ほのかな香りに導かれて、また春がめぐってくるのだと実感する。(梶川伸)

◇観心寺(かんしんじ)◇
 大阪府河内長野市寺元475。075-62-2131。南海・近鉄河内長野駅からバスで観心寺下車、徒歩3分。入山有料。大宝元(701)年に役小角(えんのおづぬ)によって開かれたと伝えられる。本尊の如意輪観音、金堂は国宝。桜、紅葉も多い。関西花の寺霊場第二十五番。
=2006年2月2日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性もあるのでご了承ください))2017.01.26

楠木正成 役小角

更新日時 2017/01/26


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