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編集長のズボラ料理(307) イカとブロッコリーのトマト炒め

トマトを加えてから長く炒めると、水分が多くなりすぎるので注意

 子どものころ、チキンライスはごちそうだった。僕らのような団塊の世代は、99%までそうだったに違いない。
 チキンライス、カレーライスはお母さんご飯の双璧だった。それにやや遅れてハヤシライスが続いた。ハイシライスとも言った。どちらが正しいのか、小さな胸を痛めて考えた。その結果、合理的結論に至った。「ハイライ」と縮めても言っていたので、「ハシイライス」が正解と。やがて恥をかく。ハイシライスの方が泥臭いのに、そう信じていたからだ。
 大人になってから、チキンライスは食べることはほとんどなくなった。何だかライスの上に旗がついているような気がして、高校以降は旗を降ろした。
 ただ、トマトケチャップ味は舌にこびりついて、そう簡単には消えない。マカロニのケチャップサラダが好きなのも、そのでいではないか。
 チキンライスを卒業すると。団塊世代の大多数はオムライスに走った。卵の乗せ方や、乗せた卵の崩し方、上にかけるソースの種類など、大人として講釈を垂れる要素をたくさん持っているからだ。
 団塊世代の友人に、洋食はオムライスしかないと思っている人がいる。先日も京都・鞍馬寺のお参りの後、出町柳の店でオムライスを食べたと話し、味について講釈を垂れていた。ただし、でも何でお参り後はオムライスんおだろう。
 オムライスのご飯のケチャップ炒めの好みは、2派に分かれる。ケッチャプ多めのベチャベチャ派と、よく炒めたパサパサ派だ。僕はパサパサ派だが、その友人はベチャベチャ派。かけてあるのはトマトソース。ありていに言えば、ケチャップだ。
 時々はドミグラスソースでもいいじゃないか。まれにホワイトソースを試してみてもいいじゃないか。しかし友人は、トマトケチャップに凝り固まっている。それなら、トマトを食べればいいじゃないか。そう思うが、友人の家を訪ねてみると。テーブルの上にトマトがズラリと並んでいた。この友人、はんぱない。
 団塊の世代にとっては、イタリアンブームは追い風になった。ともかくトマトをよく使うからだ。ただし団塊はケチャップ世代だから、生のトマトを炒めたり、ホールトマトを使うのはなじみがなかった。そのハードルを乗り越えさせたのがイタリアンだった。
 イタリア料理と言わず、「アン」と結ぶのもいい。子どものころからカタカナばかりの食べ物に憧れた団塊世代は、アンにすぐ乗った。
 イカは皮をはいで適当に切る。ブロッコリーも適当に切り、さっと塩ゆでして、水気を切る。トマトもざく切り。フライパンにオリーブオイルをひく。ニンニクの薄切りを入れゆっくり熱し、ニンニクオイルを作る。ニンニクは取り除き、イカ、ブロッコリーを炒め、鶏ガラスープかコンソメスープの素、塩、コショウで味をつけ、トマトも加えてさらに炒める。やっぱり、イタリアンになってしまった。(梶川伸)2018.07.04

更新日時 2018/07/04


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