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編集長のズボラ料理(380) アワビダケとベーコンバター炒め・チーズ焼き

少し塩を使ってもいい

 アワビは家では食べない。自宅前のイオンには売っていないからだ。というのは見栄で、売っていたとしても買わない。高いからだ。
 自宅では食べないのに、店では食べることもある。これは見栄である。
 在日コリアンの友人に誘われて、大阪市・今里の居酒屋さん「つる」で飲んだことがある。女将は在日の人だった。最後にアワビのおかゆを勧められ、「高いかなあ」と心配しつつも、その素振りは見せず、「はいはい」と応じた。ホンノリとした優しい上品な味で、気に入った。
 20年ほど前のことだった。それから、見栄を捨てて原則に戻り、アワビを食べなくなった。その間に、ほのかな味の記憶はなくなり、おまけに店までなくなった。
 W杯サッカー日韓大会の直前、大阪市のペナントを預かり、仲間と韓国のサッカー競技場に届けたことがある。僕たちの訪問の様子を、競技場の大きスクリーンに映してくれたことを覚えている。
 そのグループで、本場のアワビのおかゆを食べに行った。これは見栄ではなく、ただ団体行動に従っただけのことだった。
 食べてみて、おいしいとは思ったが、今里ほどの感激なかった。何でも最初が1番おいしいのだから、仕方がないかもしれない。しかし、今里の女将の言葉が甦った。「玄界灘のアワビを使った日本のおかゆの方がおいしいのよ」
 また原則に戻っていたが、10年ほどしてから大阪市・鶴橋の韓国料理の店で食べた。これは家族を連れていたので、見栄である。しかし、最初の店にはかなわない。とは言っても、今里の味を覚えていなから、いい加減な話である。
 また原則に戻ったが、たまにはアワビを味わいたいので、最近はよくアワビダケを食べる。アワビに似た食感だからその名がある。どうせアワビの味などほとんど記憶にないから、これで十分なのだ。
 自宅近くには奈良県の農産物を売っているところがあり、岩阪きのこ園のアワビダケを買う。これは見栄だから、別にそこのものでなくてもいい。アワビダケをバラバラにする。ベーコンを食べやすい大きさに切る。ベターで炒め、コショウで味付け。それを容器に入れ、とろけるチーズを載せ、オーブンで焼く。食感が似ているから、目をつぶって、無理矢理アワビだと信じて食べる。(梶川伸)2019.10.23

更新日時 2019/10/23


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