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編集長のズボラ料理(450) イカとエノキダケのコチジャン炒め

イカの足(げそ)中心に作ってみた

 友人の韓国料理の先生は、年末になると忙しい。料理教室の受講生に頼まれて、お節料理のセットをいくつか作るからだ。
 韓国料理のお節かと思うかもしれないが、日本のお節だからおもしろい。一緒に飲む機会があると、「韓国料理もいいけど、和食の方が好き」と平気で言う。それで韓国料理を教えるのだから、これもおかしい。
 自宅用のものも作るらしい。必ず入れるものがあるという。きっと韓国ものと想像したが、そうではなかった。大阪市・ミナミ、「はり重」のコールドビーフ(ローストビーフ)だという。手作りでないものは、これだけだとか。何のこっちゃ、である。
 在日二世、日本で生まれ育った女性。その一方で、キムチ屋をしたり、焼き肉・韓国料理の店をしたり、韓国食で生きてきた。しかし、日本生活の⑦っ歴史を考えれば、その揺らぎは理解できないこともない。
 一緒に飲む時は、居酒屋さんに行く。つまり和風が中心となる。これは僕の好みだが、彼女も賛同する。少なくとも、韓国料理系統の店には行ったことがない。自分がやっていたような店では、飲んだ気にならないのだろう。
 そのくせ、気に入った居酒屋料理や鍋ものを食べると、必ず言うことが2つある。1つは「これに、キムチを入れもおいしいと思う」。もう1つは「コチジャンもいいかも」。
 つまり、何でもかんでも韓国料理に転換しようとするのだ。何のこっちゃ。根は韓国の味が好きなのだ。僕は「さすが、韓国料理の先生」と言う。このやり取りは、いつもことで、2人とも暗記している。
 ただ、酒に酔ってくると、別のやり取りに発展する。「何でもかんでもキムチとコチジャンでいいの?」「和食もだしといりんとしょうゆばかりじゃないの」。ここまで進むと後が面倒くさいから、別の話題に変える。日韓は政府レベルで仲が良くないが、民間では友好第一だからだ。
 イカの皮をはぎ、輪切りにする。足は目の部分を切り取り、食べやすい大きさに切る。エノキダケは石づき部分を切り、ほぐしておく。フライパンに油をひき、イカ、エノキダケを炒める。味漬けはだしの素、みりん、香りづけのしょうゆ、コチジャン。
 だし、しょうゆ、コチジャン。これなら、韓国料理の先生も文句あるまい。(梶川伸)
 

更新日時 2020/10/29


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