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編集長のズボラ料理(482) 鶏胸肉のネギ油炒め

ソースは味をしっかりつけた方がいい

 鶏の胸肉が最近、人気だという。低カロリーで高たんぱく。しかも、値段が安い。いいことだらけではないか。
 ただ1つ、引っかかる点がある。安いのはありがたいが、何で安いのか。人気なら高いのではないか。
 冬を例にとってみる。てっちりの季節だから、やはり食べてみたい。癖のない、あっさりとした味がいい。その点は鶏胸肉と共通するのだが、値段は全然違う。
 てっちりは店でみんなと食べたい。忘年会ならば、少々高くてもやむを得ない。ただし、庶民レベルの「少々」である。
 しかしながら、昨年は試練の年の瀬だった。リーゾナブルな値段だったずぼらやが閉店してしまった。どこに食べに行けばいいのか、途方に暮れれた人が多かったはずだ。そんな人を、ずぼらや難民と呼ぶ。
 フグは人気があるから高い。随分昔だが、フグ好きの弁護士に誘われて、大阪市・大国町の店に行ったことがある。まあ、酒も結構飲んだが、会費は2万円で、これはしびれた。テトロドトキシンにもろに当たったほどのショックを受けた。
 弁護士のフグ好きにも困ったもんだ。別の弁護士が「忘年会をしよう」というのでついていったら、大阪市・天神橋筋の専門店だった。ただ、その日は機嫌がよく、おごってくれたから、しびれはなかった。
 カニも冬の人気の食べ物だが、なかんかの曲者である。あっさりしている点では鶏胸肉に通じるものがあるが、値段は比べ物にならない。
 食べるのは面倒くさい。細長い2本爪の専用器具を知る前までは、カニを食べる時間配分を数値化すると、身をせせるのが9割、食べるの1割だった。専用器具を使っても、3対1。そんなに苦労するのに、値段は高い。
 数年前に近所のスーパーの歳末セールの抽選会で、1等の大きなカニが当たったことがある。子どもも呼んで、盛大に当選祝いをした。後日、そのスーパーで同じようなカニを2万円で売っていたから、祝いの宴くらいは当然のことだった。
 それ以来、まとまなカニを口にしたことはない。しかし、フグに比べればましだ。かに道楽がまだある。
 鶏胸肉を塩こうじに漬けておく。その際、胸肉にフォークを何カ所も突き刺して、しみやすくしておく。塩こうじを除き、そぎ切りにし、塩、コショウをする。紹興酒をかけ、ネギ油(ネギをたくさん入れてサラダ油を熱し、味を移す)で両面を焼き、皿に盛りつける。フライパンに残った油にネギみじん切り、おろしショウガ、しょうゆ、みりん、酢を加え、煮詰めてから胸肉にかける。ズボラ料理にしては少し手間がかかり、ちょっと胸が痛む。(梶川伸)2021.02.13

更新日時 2021/02/13


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