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もういちど男と女


  • もういちど男と女(45) 我愛你 

     2人の仲は、筆談から始まった。男は思いが募って書いた。「我愛你(ウー・アイ・ニー=愛してる)」  突然だった。女の答を意訳するとこうなる。愛しているのか、好...

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  • もういちど男と女(44) 船出

     150万円をひねり出して、女は世界1周の船旅に出た。定年まで2年を残し、仕事をやめてのことだった。過去を振り払い、新しい人生の船出にするつもりでいた。  結...

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  • もういちど男と女(43) 髪

     ビートルズのレコードを聴きながら、男は青春時代を過ごした。特に「シー・ラブズ・ユー」や「オール・マイ・ラビング」といった初期のシンプルなメロディーの曲が好きだ...

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  • もういちど男と女(42) 右と左 

     男の左ひざと、女の右ひざが触れ合った。狭い居酒屋のカウンターの下で、見られることはない。2人とも、ひざを動かそうとはしなかった。  男は定年を、意識せずには...

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  • もういちど男と女(41) へって

     へって。男は自分のことを、そう表現する。香川県の方言で、怠け者や横着者のことだという。  トラック、タクシー、ダンプカーと、運転の仕事に従事した。金は稼ぐが...

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  • もういちど男と女(40) 誕生日

     離婚して長い年月がたち、男は50代になろうとしていた。仕事の合間に喫茶店に入ると、女の客と隣同士になった。  男の2つ折り携帯電話が珍しい時期で、話の糸口に...

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  • もういちど男と女(39) こま切れ

     「お母さん、きれいになったね」。娘に言われて、女はドキッとした。60歳を過ぎての恋を、感づかれた気がして。  夫は急死した。洗濯の最中、少しグッタリしている...

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  • もういちど男と女(38) 一膳飯屋

     道具箱には、折りたたみ式ナイフの肥後守(ひごのかみ)が眠っている。30年にもなり、刃にはさびが浮いてきたが、男は捨てられない。  男は苦労人だった。2歳で母...

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  • もういちど男と女(37) 庭

     燃やすことと埋めること。女は庭を見ながら、その違いを考える。  女は離婚して数年がたっていた。1人暮らしなので、会社の仲間と食事に行く機会が多かった。その日...

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  • もういちど男と女(36) 最後の恋

     男は「これが最後の恋」と言う。ありきたりの言葉だが、ニュアンスが違う。相手も男である。  若いころ、京都のお茶屋で過ごした。花柳界や芸ごとにかかわる男性の中...

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