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編集長のズボラ料理(551) 揚げジャガと揚げ豆腐の甘酢

カタクリ粉を使っているので、とろみが出る

 豆腐は昔から好きだった。冷ややっこはずっと食べているが、それ以外は長い人生の中では時期によってブームがあった。
 京都市・南禅寺近くの湯豆腐の店に入ったことがあった。たかが湯豆腐なのに、結構いい値段がする、と思った。しかし、庭の風情、赤いもうせんといった雰囲気がいい。それに鍋にの中央につぼがあって、豆腐はつぼの中の熱くなっただしじょうゆに浸して食べる。これが何とも京都っぽくて、値段のことは忘れてしまった。
 家でもこの方式の湯豆腐を採用した。だししょうゆにはカツオ節をたくさん入れ、「これやこれや」と、京都っぽさを気取った。
 やがて転機が訪れる。友人が京都の紅葉を見たいというので、案内した時だった。北野天満宮の前のリーゾナブルな豆腐の店「とようけ茶屋」で昼食をとることにし、タクシーで向かった。店に着くと、長い列。そこで運転手さんに「どこか他の湯豆腐の店に連れて行ってください」と頼んだ。
 運転手さんの答。「湯豆腐くらい、家で食べなさい」。連れて行ってくれたのは、ネギうどんの店だった。この一言で、湯豆腐ブームは終わってしまった。
 居酒屋さんに行くと、揚げ出し豆腐ばかり頼んでいた時期があった。豆腐を揚げてつゆにひたし、大根おろしを乗せて食べる。冷ややっこよりは料理っぽいし、これは値段も安い。気に入って、家でも作って食べるようになった。
 やがて転機が訪れる。ある時、揚げ出し豆腐を頼もうとしたら、一緒に行った友人が揚げ出しナスを注文した。フェイントをかけられたような気がして、それ以来、友人が「揚げ出し豆腐」と言えば、こちらは「揚げ出しナス」と仕返しをすることにした。いい年をして、何のこっちゃ、である。
 豆腐の仲間の油揚げにマイ・ブームが移った時期もあった。デパートで新潟県長岡市の「栃尾の油揚げ」を見つけたのがきっかけだった。厚揚げと思うほど分厚い。しかし、厚揚げのように中身が詰まっているわけではないので、やはり油揚げである。トースターであぶり、ショウガを乗せ、しょうゆをかけて食べた。
 やがて、福井県坂井市、谷口屋の「竹田の油揚げ」に手を出した。デパートで時々売っている。これも薄揚げの分厚いタイプ。まあ、それぞれちょっとの違いではあるが、これが僕の豆腐遍歴と言える。
 ジャガイモはよく洗い、皮をつけたままかたくり粉を振って油で揚げる。豆腐は水切りをして、食べやすい大きさに切って、かたくり粉をつけて揚げる。フライパンにサラダ油とゴマ油を入れて熱し、くし切りにしたマネギを炒める。味つけは砂糖、しょうゆ、酢とだし少々。火が通ったら、揚げジャガ、揚げ豆腐加えて、さらに炒め煮にする。
 大阪府茨木市の豆腐メーカー、伏見屋に遍路仲間で工場見学に行ったことがある。見学のあと、10種類ほどの豆腐、揚げ料理の試食があり、満腹になった。こんなことがあると、豆腐からは離れられそうもない(梶川伸)2021.10.13

更新日時 2021/10/13


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