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編集長のズボラ料理(627) 鶏肉のレモンから揚げ

さっぱり味を目指すので、鶏の表面が薄い色のほうがいい

 遍路旅の先達(案内人)をしている時だった。愛媛県今治市の57番札所・栄福寺で、毎日新聞記者時代の後輩と待ち合わせた。その地域を端渡欧している記者で、寺の住職を紹介してくれると連絡があったからだ。
 住職は著書が「僕は坊さん」と題して駅画家され、話題になった人だった。映画化されてから、仏教をあまり知らない若い人もお参りに来てくれるようになったという。一緒に記念写真を撮った。シャッターを押してくれたのは、住職の奥さんだった。奥さんは僕の顔を見て、お遍路さんが集まる店で会ったことがあると言った。
 僕はイケメンでもないし、そう目立つ顔ではない。しいて言えば顔が大きくて、帽子をかぶると深く入らず、頭の上にちょこんと載ってしまうくらいのもので、これだって大した特徴ではない。それなのに、覚えていたのだ。、
 僕は自慢じゃないが、人の顔を覚える能力が皆無に近い。奥さんと会った記憶など、頭の片隅にもない。だから、本当かどうか、ちょっと探りを入れてみた。
 「僕がその店に行ったのは2回だけど」。すると奥さんは「私は1回だけ」とか。大変な偶然に驚いて、しばらく話ををしたが、どんな顔をしたか思い出せない。本領発揮である。
 後輩は気のきく男だった。瀬戸内海・岩城島のレモンを、僕たちのメンバーに1つずつプレゼントしてくれた。地元産品を売る大型施設「さいさいきて屋」で買ったのだが、生産者の名前を見て、取材したことのある人だったからだという。彼も記憶力がいい。
 さいさいきて屋は、遍路旅のこの日のコースに組み込んでいた。参加者に女性が多く、産直の店はみんな大好きだからだ。そこで、おもしろいことを聞いた。従業員にはしまなみ海道沿いの島の人を、わざわざ雇用しているという。出勤途中に島の産品を運んできて、帰りには島民の注文を届けるためだ。なーるほどである。
 鶏肉のぶつ切りに、レモンとクレイジーペッパー(なければ塩、コショウ)をすり込み、しばらく置いておく。小麦粉に少しだけコーンスタターチを加え(なければ小麦粉だけ)、油でジックリ揚げる。
 トリカラは、よく作る。よく作ると飽きてくる。だから、時々味を変える。総菜の店・オリジンでは以前、衣に紅ショウガを加えたトリカラが人気だった。これは家でも作ってみた。「真似し」はズボラの得意技。またヒントを売っていないか、のぞいてみよう。(梶川伸)2022.10.07

更新日時 2022/10/07


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