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編集長のズボラ料理(644) イリコとアオサのポン酢

粉のアオサでいいが、できればつながったものを

 グルメの友人夫婦から電話が入った。「香川県にソバを食べに来ている」。わざわざ車で明石海峡大橋を渡って。よう、やるわ。、
 香川県といえば、讃岐うどんではないか。以前、山の中のうどん店「谷川米穀店」に案内したこともある。善通寺には参らず、駐車場わきの「八輻 」でも一緒の食べた。それなのソバとは、完全アウエーの選択ではないか。無事に帰って来られるか心配したほどだった。
 その店は、おばあちゃんが作る田舎ソバが人気だそうだ、僕は面倒くさいから、おばあちゃんが人気なのか、ソバがおいしいのか、聞きもしなかった。
 電話の本題は別だった。「伊吹島のイリコを売っている店を教えてほしい」
 それなら任しとけ。伊吹島のイリコ問題には、絶大なる自信を持っているからだ。
 高松市にその昔、1年5カ月住んだ。讃岐うどんの店409軒を食べ歩き、だしは観音寺市沖の伊吹島のイリコで取ることを知った。
 その後も四国とは縁が切れず、何度も遍路に行った。香川県に入れば、昼ご飯は讃岐うどん以外に選択肢はないことも知っている。ここ四半世紀の僕は、イリコ漬けの生活を送っていて、僕がふろに入ったあとは、だしが取れるといううわささえある。
 もちろん、伊吹島にも行った。遍路の途中、わざわざ寄り道をした。「遍路もいいけど、イリコもね」である。イリコ工場のおばちゃんたちから、「伊吹寺ではカタクチイワシの子をイリコと言い、それ以外の子は『魚の子』と呼ぶ」と教えてもらった。
 辛い経験もした。遍路旅のバスツアーの先達(案内人)をしていて、地元の物産を売っている店に寄った。参加者のためではあるが、僕にも目的があり、伊吹島のイリコを買うことだった。バスの運転者さんも買っていた。「伊吹島のイリコが好きですか?」と聞くと、「ネコの餌にするんです」との返事。僕と猫は同レベルと知ってしまったのだ。
 友人の夫婦には、いくつかの販売場所を教えたが、ソバのために瀬戸内海を渡る物好きだから、「いっそ、伊吹島に行ったら」と、冷たい仕打ちをしたのだった。夫婦は島には渡らなかったが的を達成して、アウエーの地から無事に帰宅した。その成果を見せてもらうと、あまりに大量だったので、土産にひとつかみもらった。
 そのイイリコの頭を取って、ボールに入れる。乾燥アオサ、ショウガとユズの皮の千切りを加え、ポン酢を少しかけて混ぜ、皿に盛る。
 簡単すぎる。しかし、僕はイリコだけでも酒のあてにするので、ほかの食材も使っている以上、これでも立派なズボラ料理である。(梶川伸)2023.01.12

更新日時 2023/01/16


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