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編集長のズボラ料理(657) イカとタマネギのリング揚げ

さて、どれがイカでしょうか

 食べ物には遊び心があってもいい。
 大阪市・鶴橋の焼き肉店「新楽井(あらい)」に行くと、思わず笑ってしまうことが多。炭火で肉を焼くので、部屋は煙でモウモウとなる。そこで、大きなビニーのゴミ袋が用意してある。衣服や持ち物ににおいがつくのを嫌がる客は、座る前にそれに入れる。この店の儀式と言っていい。上品さとは無縁だが、それが風情だといって、それを経験させるために友人引っ張っていく客もいる。僕も。
 煙とにおいの防御策は、レベルアップしていく。袋に加えて、今はゴーグルが登場している。これで、目を煙から守る。グループで行って、ゴーグル焼き肉を始めると、仲間同士を見合って笑い出す。店の遊び心だが、それを喜ぶ客の遊び心でもある。僕も、肉よりゴーグ派。
 奈良で勤務をしていた時の遊び。会社に最中をいただいた。僕は内勤だった。記者は出払っていた。そこで一計を案じた。最中の中身のあんこを取り出して、代わりにみそを入れておいた。
 新聞社は泊まり勤務もあり、長時間勤務もザラなので、会は社は生活の場でもある。だから台所があるし、冷蔵庫もある。食べ物も少々ある。みそ冷蔵庫にはあったものを使った。
 若い記者が帰ってきた。予想した通り、最中に手を伸ばした。10個入りの最中の中で、みそに入れ替えたのは2つだけ.運よくというか、運悪くというか、その記者はみそ最中を選んで食べた。ところが、何の反応もない。
 こちらとしてはおもしろくないから、ネタばらしをした。それでも、「エーッ」という悲鳴も、驚きの言葉も、悔しい歯ぎしりもなかった。口から出たのは、「こんな味かと思った」。
 ますますおもしろくない。確かにみそだって食品だから、食べられる。最中の皮に包んでも同じことではある。それにしても、遊び心のわからんやっちゃ。
 今回は遊んでみた。イカは皮をキッチンペ-パーでつかんではぎとる。胴の部分を輪切りにする。タマネギは皮をむいて、中央部分を横に輪切りにする。輪切りにした両側も同様に切る。各層を切り離し、外側の大きいリングを選んで使う。イカとタマネギに小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせ、パン粉をつけて油で揚げ、リングフライにする。それを適当に皿に盛る。
 遊びは、イカかタマネギか見分けがつかに点にある。何も告げずに食卓に出す。リング揚げはイカが一般的だから、タマネギを食べた時の違和感を狙う。ただ、今回はイカが小さめだったので、タマネギとの間で直径に差が出て、バレバレになってしまった。残念。ただ、タマネギも内側に近づけば円は小さくなる。最後に1つ残ったイカは僕が食べたが、何とタマネギだった。一人遊びになってしまった。(梶川伸)2023.04.08

更新日時 2023/04/08


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