このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(655) カキのバター焼き

表面パリパリするように焼く

 カキ(牡蠣)は、英語で「R」がつく月に食べると、昔から教えられてきた。「March」が押し詰まり、「R」のつく最後の月「April」が近づくと、あわててしまう。「もう1度、カキを食べておかなきゃ」
Hurry up! なぜか英語で急ぐ。Oysterを買いに行こう。
 カキはエピソードがつきまといやすい食べ物だ。見かけもグロテスクだし、食中毒の苦しさも時に聞く。殻ごと焼けば、破片が飛び散って、やけどの危険を覚悟で挑まねばならない。「海のミルク」と言われて食べてみると、牛乳とはかけ離れた味がするし。
 ところが、この冬はカキにまつわる話がない。考えてみれば、今年に限ったこと9ではなく、新型コロナウイルスのせいで、出かける機会が減ったことも、影響している気がする、
 以前は書けることがたくさんあった。遍路旅の先達(案内人)をしていて、昼ご飯にカキ小屋を選んだことがもある。焼きガキからフライから煮たカキがおかずで、カキご飯とカキのみそ汁はお代わりあり。遍路とは無縁の空間が、その回の旅では1番印象に残ったと言われ、良かったのか悪かったのか。
 仲間と岡山県備前市・日生のカキオコ(カキのお好み焼き)を食べに行くのは、冬の恒例行事だった。行きつけの店「きまぐれ」で、カキが何個乗っているかを競い、僕の自己ベストは15個で、仲間内記録を新記録を樹立した。残念ながら、きまぐれは閉店し、行くこともなくなったので、僕の記録は破られていない。
 雪の北海道で食べた厚岸産のカキ入りソバ、新大阪駅の駅弁「かきべん」……。さかのぼれば、いくつもカキ・エピソードはある。でも、この冬はない。「かき醤油(しょうゆ)味付のり」をもらって食べたくらいで、際だったものがない。このままシーズンを終えてはカキに申し訳ない。
 とりあえずスーパーでカキを買った。さて、どうして食べるか。カキのオイスターソース炒め、これはしゃれのような食べ物だが、何度9もやっている。カキのニンニクオイル炒め、これは作ると味つけにオイスターソースを使ってしまいそうだ。結局はバター焼き。
 カキは水分ふき取り、軽くコショウをする。小麦に少しコーンスターチを混ぜ、カキにまぶす。フライパンにバターを入れて熱し、カキは両面を焼くようにして炒める。レモンを絞って食べる。
 食べやすい料理だが、特筆できるストーリーがない。この冬はカキの思い出なく過ぎていく。夏カキに期待するか(梶川伸)2023.03.28

更新日時 2023/03/28


関連リンク