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編集長のズボラ料理(704) 柿トースト

チーズの乗せ方は、柿の色が見えるように

 おふくろは柿が好きだッた。特によく熟して、皮の中の果肉がドロドロになったものが。
 スプーンですくって食べていた。とても上品とは思えなかった。そのせいもあってか、子どものころは、果物の中で柿はそれほど好きではなかった。
 ところが年をとるに従って、果物の中で柿の順位はジワジワと上がっていった。定年後は1年に1つずつランクアップし、ついに2位、3位あたりまで浮上した。
 柿の固さの好みにも、変化が出てきた。以前は歯ごたえがないと、頼りなかった。これも、おふくろのスプーンの影響だった。ところが最近は、柔らかいのもいいな、と思い始めたのだ。
 年をとって、歯が弱ってきたこと関係がある。リンゴの順位を考えると、はっきりとわかる。若いころ、リンゴは1番好きな果物だった。皮のまま、かぶりついて、固いものをガリガリ食べるのが青春だと確信していたからだ。今や好きランクは、ブドウやモモ、バナナよりも下になってしまった。
 柿の順位の上昇曲線と、リンゴの下降曲線の間には、反比例的関係がある。それが年齢と果物に関して、長い年月をかけて知ったことだ。ちなみに、今の1位はスイカ。結構長い間、その地位を保っている 水分だらけだから、シャキシャキしているが、固くはない。それが長期政権の理由だろう。 ただし、スイカを野菜の部類に入れず、果物と考えればの話。
 僕は奈良県境に近い京都府木津川市に住んでいる、ここは柿と縁が深い。市内の鹿背山地区は、ちょっとした柿の産地になっている。その柿を使った「木の津・柿一口ようかん」は、近くのスーパーの地元商品のコーナーで売っている。柿大福を売っている和菓子屋さんもある、奈良県は柿の産地で、柿を使ったお菓子「柿寿賀」も時々食べる。
 鹿背山の柿は時期なると、自宅近くにテント張りの出張販所が店開きする。安いから10個買う。スーパーでは奈良の柿も買ってみた。家に柿があふれている時に、友人が柿を送ってきた。
 懸命に食べたが、柿の一部は追熟してドロドロになった。おふくろスプーン状態。柔らかいのも好きになってきたが、スプーン食べまでは進んでいない。そこで………。
 6枚切り食パン1枚を用意して、バターを塗る。柿のドロドロをスプーンですくって、バターの上に塗る。とろけるチーズを乗せて、オーブントースターで焼く。焼き上がったら、バルサミコをふる。
 食べる時にはスプーンは使わないから、おふくろとは違う。かろうじて。(梶川伸)2023.12.18

更新日時 2023/12/18


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