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編集長のズボラ料理(833) キャベツと玉子のオリーブオイル和え

乾煎りして水分を飛ばすのがみそ

 香川県の名物に、しょうゆ豆がある。地味な食べ物だから、それほど知られてない。僕は高松市勤務だったことがあるので知っているし、何度も食べたし、土産にしたこともある。
 ある時、よく世話になった居酒屋さん「遊」の女将に、正しいしょうゆ豆を教えてもらった。ほうろくで乾煎りしたソラマメをしょうゆに漬けておくそうだ。だから歯ごたえある。
 ふと、土産にしたしょうゆ豆は、柔らかかったことを思い出した。そのことを女将に話すと、「最近は煮ているものもある。その方が簡単だから」と返ってきた。
 きっぷのいい女将だった。高松に訪ねてきた友人と一緒に行く時は、食べ物・飲み物を注文せず、女将にお任せした。すると、友人を喜ばそうと、香川のものを中心にいろいろ考えてくれた。
 好き嫌いもはっきりしていた。衆議院選挙の時はびっくりした。投開票日の夕方、会社に10人分余りの弁当が届いた。女将からだった。頼んだわけではないのに。
 投票日の直前に、新聞社は当落を予想し、終盤情勢記事を掲載する。僕が勤めていた毎日新聞は、小選挙区では現職有利を予測した。ところが他の新聞社はどこも、有力新人が優勢という記事だった。女将は有力新人を嫌っていたので、毎日新聞の情勢記事を喜こんだのだ。
 記事は候補者をえこひいきをしているわけではない。女将は共感してくれたが、僕らはヒヤヒヤだった。分析が他社と違うから、少し自信を失いかけていた。
 選挙結果は、毎日新聞の予測の通りになった。僕たちはホッとし、女将は大いに喜こんだ。そこで、選挙取材の打ち上げは、弁当のお礼も兼ねて、遊で開くことにした。料理はもちろんお任せ。
 テーブルには大きなほうろくが2つ。中は大きな鯛。鯛のほうろく焼き。選挙で勝ったような気分になった。
 今回は乾煎りを工程に入れてみた。ただ、うちにはほうろくがないにで、フライパンで代用した。キャベツを細切りにして、鶏ガラスープ素、塩、コショーで煮る。水分をほとんど除き、フライパンで乾煎りし、溶き卵でとじでバージンオリーブオイルをかける。
 ご近所さんに、しょうゆ豆をもらった。てっきり香川県の名産と確信したが、包装の袋を見ると。長野県のしょうゆ会社のものだった。豆を米こうじとしょうゆに漬けてある。しょうゆ豆はほうろくで乾煎りした香川県産と思い込んでいたが、先入観念で即断すると情勢判断を誤ってしまうのだ。(梶川伸)2025,10,25

更新日時 2025/10/25


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