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編集長のズボラ料理(707) スルメの天ぷら

青ノリは好みで

 居酒屋さんで飲む時、あての定番がいくつかある。王様は枝豆だろう。
 注文して出てくるまでが速い。のどが渇いていて、店に入るやいなや、「とりあえずビール」というおなじみの銘柄を頼んだ時、すぐさま運ばれてくるのが枝豆だ。これはありがたい。飲み物よりも早いことがあり、「弾よりも速く」のスーパーマンに匹敵する。
 そんな安易なあてではあるが、王様らしい威厳がある。枝豆だけは、2つ重ねの皿で出てくる。偉い人が座布団2枚を重ねて座ることに似ている。
 最初に2つ重ねを見た時は面食らった。枝豆を2分割して食べよ、ということかと思った。しかし、2人で行ったわけではない。もっと人数が多かったからだ。ことの真相をしばらく考えていると、ベテランの酒飲み人が教えてくれた。下の方の皿は、豆を食べた後の皮を入れるるのだと。
 2つ重ねは、それほど昔からあったわけではない気がする。一般化したのは、平成になってからではないか. これは大発明だった。居酒屋愛好界のノーベル賞「飲ーめる賞」を受賞してもおかしくない。
 それまでは皿が1つ。そこから枝豆を1つつまみ、豆を食べたら皮を戻していた。このシステムでは、食べる前のものか、食べた後のものか、見極めが難しい。しかも、皮は上の方に積み上がっていくので、豆の入ったものは底の方に隠れていく。
 そこで、緑の山を見極め、狙いを定め、決断して、指を緑の山に突っ込むことになる。食べ進むに従って、豆のあるものの割合は減っていき、最終盤になると、当たる確率が極端に下がる。うまく手にしたとしても、それが最後のものかどうかは、あと2~3人が挑戦しなければならない。そして皇族者が全員空振りになった時、初めて完食を宣言できる。それでも、残っていないのか疑念が残る。緑の山の底は見えないのだから。
 皿の2つ重ねになって、そんな心配はなくなった。1つの皿が空になれば、おしまい。不正が行われたり、疑問が残る余地がない。
 居酒屋さんのあての定番にはほかに、土手焼き、ポテトサラダ、串カツ盛り合わせ、エイヒレなどがある。ただ大阪では、枝豆に次ぐ2番手はスルメの天ぷらだろう。量が多く見えるし、1本食べるのに時間がかかるで、仲間での飲み会には欠かせない。
 作り方など考えたこともなかったが、ベテラン酒飲み人に教えてもらった。「イカのくんせい(イカくん)」「ソフトさきイカ」といった酒のつまみを使えばいいらしい。それなら簡単。
 ソフトさきイカなどを用意する。小麦粉を水で溶かし、青ノリの粉も加え混ぜる。それを衣にしてイカにつけ、油で揚げる。揚げる時、菜箸を使って、イカ同士がくっつかないようにする。
 居酒屋さんで食べるたび、いい味がすると思っていたが、もともと味がついているものを揚げているので、それも当然だ。酒のあてを使って、酒のあてを作るのだから、これも飲ーめる賞的発送と言える。(梶川伸)2024.01.08
 

更新日時 2024/01/08


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