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編集長のズボラ料理(46) マグロ・キムチ

和えてから、冷蔵庫でしばらくねかせた方が味がまじむ

 マグロはくせ者だと思う。高いのか安いのか、よう分からん。
 大阪市・天神橋は、すし屋の激戦区ということもあって安い店が多く、心配なく入れる。マグロなら、2貫で100円だとか200だとか、そんな値段だから、「いくらでも、好きなだけ食べて」と、偉そうにおごることができる。普通のマグロなら、である。
 トロになると、やや値は上がる。ただ、おごる相手がトロを注文したとしても、そればかり食べることはないだろうと計算し、「遠慮せずに食べて」と、トーンは落ちるものの、まだ偉そうな態度にも余裕がある。
 JR大阪駅の北に、グランフロント大阪がオープンした。その中に近畿大学水産研究所という名前の店があり、大変な人気だという。研究所が直営し、養殖に成功したマグロを出す。話のタネに行かねばならないと決意して、出かけてみた。
 1回目は店の前にできた長い列にうなだれて、素通りした。2回目は午後5時の開店直後に行ったが、その時点で2時間待ちと聞いて、なえてしまった。3回目は知恵を絞った。開店直後に入った人が店に滞在する時間を1時間半と見て、午後6時半に行った。作戦は成功したが、それでも半時間近く待った。マグロを食べるのは、大変な努力が伴うのだ。
 さて注文。大トロと中トロと赤みの刺し身に、ごく小さなマグロ料理がいくつかついて2800円。刺し身は3切れずつ。だから、3人で行くのがベストだ。2人なら残りの1つを巡って、冷たい火花が散り、相手がよそ見をしている間に、サッとはしを伸ばすテクニックが必要になる。4人なら、本心とは裏腹に、遠慮を装わねばならず、マグロを前にして沈黙が続きかねない。
 解決策は2皿を注文する以外にないが、かといって大変な勇気と根性と決断力の3つを「兼ね備え」ていなければ無理だ。いや、正直に言えば「金備え」ていなければ、お先マグッロだ。
 そこで、ダジャレでごまかさなくも良い料理。居酒屋さんで出たものを、ズボラにアレンジしたものだが。スーパーでマグロの切り落としを買う。これは安い。キムチ、カシューナッツ、カイワレと一緒に和えるだけ。これなら、「目いっぱい食べて」と、胸を張って言える。(梶川伸)

近畿大学水産研究所 編集長のズボラ料理

更新日時 2013/06/28


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