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編集長のズボラ料理(88) ネギのベーコン巻き

ふたをしてネギに熱を通らせるのも良い

 10年ほど前、毎日新聞の「余禄」というコラムに、ネギのことを書いたことがある。値段の安い中国からのネギの輸入量が急増した時期で、日本政府が緊急輸入制限の枠をはめたことを取り上げた。
 料理の世界でネギはいつも脇役に甘んじているが、その時期だけはネギは主役になった。コラムでは、日本のネギを食べましょうと書いた。
 今はスーパーに行っても、ネギはほとんどが日本産だ。僕が住んでいるのは京都と奈良の府県境で、田園も広がっているため、地元産のネギも売っている。コラムでは日本産を推奨したが、僕にとっては日本産か地元産か、という選択である。この答は簡単で、当然地元産となる。
 ところが、ここからがややこしい。地元産とは何かとい大問題が控えている。つまり、京都産のネギを買うか、奈良産のネギを買うか、という苦渋の選択が。
 難しさを分かってもらうために、自宅アパートの立地を説明しておく必要があるかもしれない。自宅は京都府木津川市もにある。ところが、自宅から100メートル歩くと奈良市になり、歩いて8分の最寄り駅奈良市にある。この中途半端な立地が、ネギ問題でいつも僕を悩ませる。
 アパートのすぐ前に、イオンの大きなショッピングモールがある。自宅の玄関からイオンの建物の自動ドアまで、歩いて1分で行ける。しかも食料品売り場は午前7時から午後11時まで営業している。うちの冷蔵庫は小さいので、イオンをその代わりにしているようなものだ。
 イオンのビルの中に府県境があり、ちゃんと線が引いてある。食料品売り場は、京都側にある。ところが、地元産品のコーナーのネギは、なぜか奈良産なのだ。僕は京都府民だから、できれば京都産がほしい。それなのに、である。
 歩いて5分ほどの所にはスーパーの近商ストアがある。ここには、地元産品のコーナーに、京都産のネギを置いている。それで問題解決だと思うだろうが、そんな生やさしいテーマではない。近商ストアの所在地は奈良市である。奈良市の店で京都産のネギを買って、地産地消と言えるのか。
 このジレンマから脱するには、1つしか方法はなかった。根つきのネギを買ってきて、根の部分を次々と自宅の小さな庭に植えた。これで胸のつかえが下りた。しかし、植えたネギは京都産と奈良産が混じっている。どうしよう。
 ネギを主役に文章を書いたが、ちょっと無理があったか。料理の方は、ネギはやっぱり脇役かもしれない。ネギを5センチくらいの長さに切る。何本か束ねて、ベーコンで巻き、つまようじで留めておく。コショウをふって、フライパンで焼く。味が物足りなければ、軽くしょうゆをたらす。(梶川伸)2014.05.30

編集長のズボラ料理 近商ストア

更新日時 2014/05/30


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