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編集長のズボラ料理(240) サーモンとアボカドの生春巻き

サーモンとアボカドのネットリ感とレタスのシャキシャキ感の組み合わせで食べる

 四半世紀ほど前、友人の放送記者の家の集まりに呼ばれたことがある。奥さんの手料理をあてに、みんなで飲んだ。
 印象に残った料理は、生春巻きだった。その記者が東南アジアの特派員をしていた時に、覚えたのだという。中身が何だったのか記憶にないが、ライスペーパーで巻いてしまえばいいので、簡単そうだった。「これならできる」と思った。
 でも、すぐにあきらめた。生春巻き自体をほおとんど食べたことがないのに、つけて食べるスイートチリソースを、当時の僕は知らなかったからだ。とてもできそうもない。できたものを探せばよかったが、それほどの熱意はなかった。
 やがてアジアンテイストの店が増えていったし、居酒屋さんでも生春巻きをメニューに加えるようになった。そうなると、店で飲む時には注文する。家でも作ってみたくなる。ともかく、巻いてしまえばいいのだから。
 ところが、またソースの難関が待ち構えていた。友人の奥さんは、やっかいなものを食べさせてくれたものだ。面倒くさいから、スイートチリソースをやめた。その代わりに、辛みそを作ってつけて食べた。アジアンテイストは突如、和風に変わってしまった。
 また、生春巻きを作ってみたくなった。中身のメーンは決めていた。サーモンとアボカド。さて、サブを何にするか。その時、頭に浮かんだのは先輩の顔だった。
 先輩に行きつけの喫茶店で、よく昼ご飯をおごってもらった。先輩が必ず注文するものがあった。BLT。最初に聞いた時、何のこちゃ、と思った。聞けば、「ベーコン・レタス・トースト」だという。そんな先輩である。
 先輩はおしゃれというか、奇抜というか………。シャーロック・ホームズがかぶっているような鳥打ち帽をかぶって取材する。ホームズならその昔の警察署では似合うかもしれないが、現代の日本の警察署では異彩を放ちすぎていた。BLTはそんな延長戦上にあった。
 ここは先輩をたてて、レタスを使うことにした。理由は簡単だ。つい最近、JR梅田駅のホームズ、いやホームで、偶然出会ったからで、別に深い意味はない。
 サーモンとアボカドを小口切りにする。レタスは5ミリほどの幅で細長く切る。ライスペーパーを湯につけてしんなりさせ、その上に3種の中身を乗せ、軽くクレイジーソルトをふってから、細長い形に包む。最後はライスペーパーの端に水をつけて“のりづけ”する。
 後は食べるだけだが、そうなるとまたソースの問題が浮上してくる。意地でスイートチリソースは使わない。オリーブオイル、酢、白だししょう、多めのワサビを混ぜて、ソースにした。ヒントをくれた先輩に感謝して、SALと名づけよう。サーモン・アボカド・レタス。(梶川伸)2017.01.26

更新日時 2017/01/26


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