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編集長のズボラ料理(253) コシアブラの天ぷら

サックとした食感になるように心がける

 食べ物の世界には王様と女王がいる。その資格はおいしいということだろうが、案外あいまいでもある。
 僕の場合はご飯(米)が食べ物の中で1番好きだ。毎日食べても飽きないのだから、堂々たる地位を占めている。人生で1番多く口にする食べ物だと思っている人も多いはずだ。しかし、米が王様や女王に就任したという話は聞いたことがない。どうも王様や女王は、米以外から選出されるようだ。可愛そうな米。
 魚の王様はタイという。魚に絞れば、僕も異存はない。刺し身がいいし、塩焼きや炊き込みご飯にも舌つづみを打つ。特にあら煮を食べた後の甘辛いあらに、熱湯をかけたスープはたまらない。
 サヨリは魚の女王という言い方がある。これはどうか。細長いスタイルは上品で女性的ではある。味にも気品がある。おやじ、おふくろは広島の出身だったので、広島に行くとサヨリの干物を買ったので、僕の好物の1つではある。しかし、サヨリは魚のツゥィギーみたいなもので、女王ならもう少しふくよかな方が似合いはしないか。
 川魚の世界では、女王の方が有名だ。それはヤマメで、山女魚と書く。いかにも女王らしい。第一、姿が美しい。アマゴやらイワナやら、そっくりさんがいて、下手をすると地位を追われはしないかと心配する。
 では王様は、というとアユということになるのだろう。川魚の代表格だろうが、最近はたくさん出回っていて、やや威厳に欠けてきた。
 時節柄、山菜についても考えてみる。春の山菜の象徴はタラノメだから、これが王様として座りがいい。
 問題は女王だ。コシアブラを推す人がいる。若葉はみずみずしい黄緑色で、脂分を感じさせるようなつやがある。女王の条件として申し分ないかもしれない。ただ、友人に山菜摘みに連れていってもらった際、「素人が取りやすのはコシアブラ」と言われた一言が引っかかっている。何だかありがたみがないような気がして。
 コシアブラに小麦粉をまぶす。小麦粉に少しコーンスターチを混ぜて水で溶き、衣にする。コシアブラに衣を軽くつけ、油で揚げる。この天ぷらはあまり技術はいらず、素人でも揚げやすい。(梶川伸)2017.04.04

更新日時 2017/04/04


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