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編集長のズボラ料理(261) ゆで卵の豚三枚肉巻き焼き

脂身が残るよう、焼きすぎないようにする

 豚バラという。豚の三枚肉のことだが、正式の言い方をする人は少数派で、60%の人は「豚バラ」という。それは僕の周りの5人ほどの言い方を分析した結論である。
 毎日新聞に「けったいでんなあ」というコーナーがあった。ちょっと変わった人をを紹介する欄で、僕も何人か取材した
 楽しく話を聞かせてらった人がいる。1度取材させてもらった縁で、「魔法のターボ」なるものを発明したと連絡をもらい、出かけて行った。場所は門真市幸福町。地名にふさわしい幸せなおじいちゃんが住んでいる。
 新発明は電気炊飯器の中に入れ、炊きあがったご飯が、1日たってもまずくならない魔法の木製品だった。効果の証明法が実にユニークだった。
 おじいちゃんの周辺の味にうるさい4人の女性に、炊き立てのコシヒカリと、1日たった標準米を食べてもらった。すると、そのうちの2人が「差はない」と言ったという。だから、効果は間違いないと、自信満々だった。
 何という統計学的かつ科学的考察。それならば、分析対象が1人多い僕の科学性は言うまでもない。ちなみに、「なぜターボなのか」を聞いてみた。ターボの機能が、を生んでいるのではないか。と心によぎったからだ。しかし、「小さな孫が名前を決めた」というのが、明らかにんされた事実だった。孫は科学よりも強く、事実は小説より奇なり、だった。教えられることの多い、充実した取材だった。
 友人からは、豚バラの神髄を教えてもらった。お好み焼き名人を自称し、客が来るとフライパンでお好み焼きを作って食べさせる。ただ、その前に1つ儀式がある。両手でフライパンの柄を持ち、片面が焼けたお好み焼きを放り上げてひっくり返すのだ。これを見た客は「うまい」と拍手をする。この儀式を経ないと、お好み焼きは決してテーブルに運ばれてはこない。
 実は幸福町のおじいちゃんの最初の取材は、空飛ぶラーメン丼だった。座席3つの小さな店でそれを考え、大ヒットしているというのだ。
 ご飯にみそ汁をかけて食べていた昔を思い出し、ご飯にラーメンをかけて食べるという画期的な新商品を考案した。それだけでは空を飛ばない。そこで、おじいちゃんは、ゆでた麺(めん)をざるに入れ、両手でざるを持って麺を放り上げ、またざるで受け止める。それを繰り返し、水分を切る。そうして麺は、空を飛びまくるのである。お好み焼き名人と同じ発想で、名人には相通じるものがある。
 では新商品、どれくらいのヒットなのか。1月に5杯くらいは出るという。つまり、ヒットとは月5という、過去の定説をくつがえす画期的な新定義だった。
 一方、名人は言う。「お好み焼きは豚バラに尽きる」。三段ばらを気にしながら、さらに深いお言葉を放つ。「豚バラは“だし”を取るのが目的」。だから、お好み焼きを食べる時は、豚バラを捨ててしまう。深い、深す
 わけの分からない文章になってきたが、豚バラと使うための導入だった。ゆで卵を作る。細長い豚バラを十字にして並べ、その上にゆで卵を置き、豚バラで巻いて包む。端は溶いたカタクリ粉を塗って止める。フライパンで転がしながら焼く。しょうゆ、砂糖、みりんでたれを作り、それをつけながら焼いて味をつける。これは月に、どのくらい食べてもらえるだろうか。(梶川伸)

更新日時 2017/05/22


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