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寺の花ものがたり(144) 聴松院(京都市左京区区)梅=2月上旬~下旬

2008年2月1日撮影

 私が遍路を好きになるきっかけを作ってくれたのは、ノンフィクション作家の柳原和子さんだった。ある時、2人で酒を飲んだ。柳原さんは若いころの遍路体験を語り、私も酒の勢いで遍路に出た。
 柳原さんは京都・南禅寺にほど近いマンションに住んでいた。がんを発症し、「がん患者学」と題した本を著し、患者視点の専門書として評判になった。やがて、東京の聖路加(せいろか)病院のホスピスに入った。
 入院生活は寂しいだろうと思い、南禅寺周辺を歩いて写真を撮り、送ったことがある。その中に1枚に聴松院の梅があった。
 聴松院は南禅寺の塔頭(たっちゅう)の1つだ。南禅寺から哲学の道に入り、慈氏院を経て、聴松院に立ち寄った。堂の前に古い白梅があり、2~3分咲きだった。幹が90度に近いほど曲がり、そのうねり具合がおもしろいようで、たった1本ではあるが、京都では人気のある梅のようだ。
 永観堂の前を通り、若王子神社を経て、疎水沿いに歩いた。赤い南天と白い南天が入り混じった水際が印象的だった。最後に法然院に寄った。柳原さんが俳人の黒田杏子(ももこ)さんを招き、遊び仲間で句会を開いた懐かしい場所だった。
 柳原さんは2008年に亡くなった。2017年の11月だったか12月だったか、NHKが柳原さんを取り上げたドキュメントの再放送をしていて、チャンネルをさわっていて偶然に見た。その時にこの梅も頭に浮かんだ。私にとっては、思い出の中に生きている大事な木になっている。

◇聴松院(ちょうしょういん)◇
 京都市左京区南禅寺福地町86−15。地下鉄東西線駅から徒歩15分。バスは南禅寺・永観堂道バス停から徒歩10分。075-761-2187。本尊は釈迦如来。南禅寺14世清拙正澄の塔所として創建された。境内は一部自由。
(梶川伸)=状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください。2018.01.31


更新日時 2018/01/31


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